診断書というのは、性別適合手術における医師の診断書である。
1年近くカウンセリングを定期的に行い、2名以上の医師により性同一性障害の診断を受け、身体的治療が妥当であると判断する診断書である。つまり、この診断書がないことには、手術は行えない。
未成年であるらいちは当然、親の承諾が必要であり、診断書をもらい手術に同意してもらうための最終確認だったのだ。
「親に話したときは、どうだったかな~。記憶が曖昧で……。母親はさらっと『男になっちゃうね』って感じで伝えて理解を得て。その後に父親に話したら、ほんと激怒されましたね」
らいち曰く、母親は薄々気がついていたというが、父は本当に怒っていたという。
長女として大切に育ててきたわけだから、行き場のない怒りだったのかもしれない。そんな父だったが「自分を納得させられる資料をもってきなさい」と答えたそうだ。
その後、母と札幌の病院にカウンセリングに向かい、診断書を無事、発行してもらえることになった。それに付随する資料を持ち帰り、父に見せるとあまりにもあっさりと納得したため、その落差に驚いた。
「この胸がなくなる」と思うと、嬉しくて仕方なかった
そして、らいちは高校3年生の10月、胸の除去手術を受けることになる。最終的に、手術費用はバイトで貯めたお金だけでは足りず、親も負担してくれた。
手術日前夜、らいちはこれからなくなる胸を、鏡で見ていた。得も言われぬテンションになり、携帯で自分の胸の写真を撮る。とにかく「この胸がなくなる」と思うと、嬉しくて仕方なかった。
札幌の病院での手術は、母も同行し、行った。3時間ほどの手術を終え、2週間入院することとなる。なくなった自分の胸を見て本当に嬉しかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら