中学生時代は自身の感じる違和感を、らいちは誰にも相談することもなく隠して過ごしてきた。
そのまま地元の高校へと進学することになるが、ここでらいちは自身の境遇とは違う選択をする。あえて女子高に進学したのだ。
「女子高に進学したのは、自分の中では逃げですね。共学に行って、周りの男子と自分を比べて(体格などで)劣っているのが嫌だったんです。だから、あえて女子高にしました。そのほうがラクですしね」
比べるべきは女子ではなく男子。高校進学の頃、らいちの心は完全に男になっていたのだ。
けれども自分自身を「空気を読むのがうまい」と評するように、女子高では周りと合わせつつ、女子高なりのガールズトークで盛り上げてきたという。
性転換手術ができることを知った日
そんならいちに転機が訪れたのは、高校2年の春だった。あるとき、性転換手術のシステムを知ることになる。
「それまで手術や性転換ができるっていうことを本当に知らなくて。それで高2の頃にネットでそれができるんだって知って、衝撃を受けました」
自分も本当に男になれるかもしれない。そう思ったらいちは、すぐに札幌のクリニックに電話し、カウンセリングの予約を入れた。この段階では周囲には内緒にして進めてきた。
手術には最低でも300万円かかることを知り、高校でも続けていた部活を辞め、学校には内緒で飲食店でアルバイトを始める。毎日、授業が終わるとバイトに行き、「少しでも費用の足しになれば」とお金を貯めてきたのだ。
カウンセリングは2カ月に1度。北見市から高速バスを利用して約1年間、札幌の病院に通い続けた。
そして、いよいよ診断書がとれるという段階になり、保護者の承諾が必要となる。つまり、これまで隠していたことを、両親に話さねばならなくなったのだ。
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