乱立大麻店の運命やいかに? 5月タイ総選挙の行方 大麻解禁で一気に街中へ、アジアで唯一の緩い国

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大麻産業のさらなる発展を誓う名誉党に対して、タイで最も長い歴史を持つ民主党は「大麻が好きなら名誉党に、嫌ならわが党に投票を」と呼びかけるキャンペーン中だ。

タクシン元首相の娘で首相候補のペートンタン氏(写真・柴田直治)

最大野党で次期政権をめざす「プアタイ(タイ貢献党)」も、タクシン元首相の娘で首相候補のペートンタン氏が2023年3月5日、前回選挙で名誉党が8議席を独占した東北部のブリラム県に乗り込み、「私は母として、大麻が容易に手に入る環境のなかでこの国の子どもたちを育てたくはない」と敵地で宣戦布告した。

2023年4月5日、首都近郊のノンタブリー県で行われたプアタイの首相候補発表のイベント会場で、同党比例区の有力候補であるソンクラム元副商務相に話を聞くと、「われわれが政権を取れば大麻の使用は医療用に限定する。嗜好用の販売店は認めない」と断言した。

しかし私は、プアタイが政権を奪取しても、乱立した大麻の販売店が閉鎖に追い込まれることはないだろうと予測する。

どちらが勝っても大麻販売は安泰か

選挙戦の最大の焦点は、クーデターで民選のインラック政権を追放した軍部の流れをくむ親軍政権が続くか、否かだ。与野党に関係なく各党の打ち出す公約は、最低賃金の大幅な引き上げであったり、低所得者や高齢者向け給付金の増額だったりとばらまき色全開で、大麻問題はその陰に隠れがちにみえる。

クーデター後の軍政が2017年に制定した現行憲法下では、首相指名選挙で投票するのは総選挙で選ばれる500人の下院議員に加えて、任命制の上院議員250人。政権を取るには375票以上が必要だが、軍が主体となって任命した上院議員らは親軍政党に入れるので、プアタイなど野党側が政権を取るには総選挙での地滑り的な圧勝が必要となる。

世論調査で優位が伝えられるプアタイが単独で政権を担うのは極めて困難とみられる一方で、親軍政党は上院の議席分の下駄を履かせてもらっても、やはり単独政権はとても無理と予想される。つまりどちらに転んでも連立政権となることはほぼ確実だ。

下院で現在第3勢力の名誉党は、選挙後、親軍側、プアタイのどちらが政権に就くにしろ、再びキャスティングボートを握る可能性が極めて高い。連立をめぐる交渉次第ではアヌティン氏の首相就任もありうる。

とすれば、街にあふれる大麻の販売店が店仕舞いを強いられたり、強い規制をかけられたりするとは思えない。

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