乱立大麻店の運命やいかに? 5月タイ総選挙の行方 大麻解禁で一気に街中へ、アジアで唯一の緩い国

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日本人が多く住むスクンビット地区で、名の知れたホテルチェーンの1階に派手な看板を掲げる販売店に入ってみた。きれいなショーケースが何カ所か設置され、大麻を入れた小さなプラスティックの箱が並ぶ。

陳列棚に置かれた大麻商品(写真・柴田直治)

向精神作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有率や産地、効能(リラックス、睡眠、幸福感、性的興奮、サイケデリック感、痛み止め)、風味(バニラ、フルーティ、クリーミー、ライム、バジル)などによって種類が分けられ、値段は1グラム695バーツ(1バーツ約3.9円)から995バーツ。

0.5グラムを紙巻にしてたばこのように吸うジョイントのほか、大麻入りグミ、口の中に垂らすオイルなど商品の種類も多彩で、パッケージのデザインはしゃれている。店の内装はポップな感じだ。

タイ北部・チェンマイの畑で栽培

タイ人男性の店長(27)がいろいろ説明してくれた。バンコク中心部に数店を展開する大麻販売チェーンのひとつで、2022年9月にオープンした。アメリカ製の種をタイ北部のチェンマイの畑で栽培しているという。客の95%は外国人。タイ人には値段設定が高く感じるからだろうと推測する。

温暖な気候のタイで大麻はそこここに自生しており、アユタヤ時代(14~18世紀)から薬草の一種として使われてきた。これまでも法律上は禁止されていたとはいえ、その気になれば比較的簡単かつ安価に手に入れることができるので、タイ人はきれいなパッケージに包んだ「草」をわざわざ高値で買う必要を感じないということのようだ。

夜間に出てくる大麻販売の屋台(写真・柴田直治)

英語で接客にあたる3人の店員は、いずれもミャンマー出身の若い女性だった。2021年2月の軍事クーデター以来、政情が混乱する母国を離れてバンコクにやってきた。日給は800~1100バーツで母国より断然よいと話してくれた。外国人相手の接客が主なので、英語を話せるミャンマー人や南アジアの人々が雇われることが多いという。

別の店でジョイントを楽しんでいたドイツ人旅行者は、「ドイツでも合法化が検討されているが、実施はまだ。ここまで街中でいつでも堂々と吸える環境はヨーロッパでもそうはない。値段もリーズナブルだし。旅行を楽しめるよ」とリラックスした様子だった。

一般のタイ人はどう思っているのだろう。気にしない人も多いようだが、スクンビット地区のマッサージ店主の女性(47)は眉をひそめていた。「増えすぎよ。子供にもよい影響があるわけがない。医療用というなら医師の処方箋で購入するようにすべきでしょう。次の首相にはびしっと禁止してもらいたい。元の街に戻してほしい」。

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