サントリーのプリンスが抱く「酒類日本一」の野望 「金麦」に逆風、新商品投入でビール強化に躍起

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――大手4社でビール市場を4分割した「シェア25%」を目指すと、サントリーからよく聞きますが、鳥井社長もそこにはこだわりがありますか。

強いこだわりを持っている。もちろん、明日25%になるかといえば、そうはならない。2023年も含め、あと2回酒税改正があり、市場が大きく変化するのは間違いない。酒税改正を追い風にしたい。こうした外部からの変化に加えて、革新的な商品を出していく。

【図表】酒税改正のスケジュール

ただ言っておきたいのは、あくまでシェアは結果でしかないということだ。ビール市場を全体で盛り上げていきたいと考えている。最近は若い方を中心に「ビール離れ」とよく言われている。でも「そう言わんと、1杯くらい飲んでみてよ」と言いたい。ビールは上を向いて飲まないと苦味をものすごく感じる飲み物だ。そうやって飲めば「ビールがおいしい」と感じてもらえるはずだ。

そもそもビールは、昔から課税出荷量が唯一公的に公表されていたお酒だった。カップ麺やアイスクリームがいくら売れたとかという数字はなかったが、ビールだけは国が発表していた。やはり数字が公表されると、不毛なシェア争いをせざるをえなくなる。

その結果、ビール各社はお客様不在というか、いろいろなチャレンジができなくなった。ここ数十年、ビール類市場は縮小を続けている。そろそろ自社だけのことを考えるのではなくて、ビール各社がもっと市場を盛り上げることをしていかなきゃいけない。

スタンダードビールに風穴を開ける

――2023年春には新商品「サントリー生ビール」を発売し、将来的に年間出荷量1000万ケースという大台を目指しています(詳細は『サントリー、ビール最激戦区に新商品投入の勝算』参照)。

サントリー生ビールは、今までの商品と風味が異なることが一番の驚きだった。うちで「こんなビールが作れるんだ」と。過去のサントリーのビールを知っている人からするとびっくりするような味で、ビール事業を統括する西田英一郎常務に「こんなの作れるんや」って言ったほどだ。

サントリーが4月に発売した新商品
サントリーが4月に発売した新商品の「サントリー生ビール」。アサヒビールやキリンビールの後塵を拝するビール市場での浮上を狙う(記者撮影)

ただ、サントリーはいわゆる(中価格帯の)スタンダードビールを何年も売ったことがない。流通の方々には「とにかくうちは(中価格帯ビールの)売り方を知りません。教えてください」と挨拶しているほどだ。売り方をいろいろと学び、あとは我々が自信を持ってつくった味を、お客様が本当においしいと言っていただけるかどうか、だ。

スタンダードビールは選択肢が非常に少なく、現在メインとなっているのは3種類程度(編集部注:「スーパードライ」「一番搾り」「サッポロ生ビール黒ラベル」が主力商品)だ。そこへ風穴を開けるためには知恵を使わないといけない。営業会議でも相当に発破をかけている。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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