サントリーのプリンスが抱く「酒類日本一」の野望 「金麦」に逆風、新商品投入でビール強化に躍起

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サントリーホールディングスの鳥井信宏副社長
サントリーホールディングスの鳥井信宏副社長は、国内総合酒類のトップ奪取に向け、ビール事業強化に強い意欲を示した(撮影:尾形文繁)
サントリーホールディングス(HD)の次期社長ーー。そんな呼び声が高い人物が創業者・鳥井信治郎の曾孫にあたり、鳥井信一郎元社長の長男である鳥井信宏氏だ。現在はサントリーHD副社長と国内酒類事業を担うサントリー株式会社の社長を務める。
サントリーは国内の総合酒類シェアで20%程度。圧倒的な国内酒類トップになるためには、3位に甘んじるビール事業の強化こそが、鳥井氏にとって喫緊の課題だ。第3のビール(新ジャンル)は2023年と2026年に控える酒税改正で増税となり、主力商品「金麦」の販売数量減少が懸念されるからだ。
創業家出身のプリンスとして、その手腕に注目が集まる鳥井氏に、大株主としてサントリーをどう見るか、自身の役割や目指す方向性について聞いた。

サントリーは「運のええ会社」

――鳥井社長はこれまで、そしてこれからの人生も「サントリー創業家」の一員であるということがついて回ってきたと思います。その立場について嫌だと感じたことは。

創業家で良かったとも、嫌だったとも感じたことはない。創業家出身である、ということに気負いもないし、ただの「事実」だと思っている。私は左利きですが、「あなた左利きですね」って言われるぐらいの感じだ。それに対して「はい、左利きですよ」と。創業家であることを受け入れている。

ビジネスの話で言えば、流通や食品の業界も割とオーナー企業が多い。ついこの前もオーナーの集いのようなものがあった。そういったものは私だからこそ出席できる。他にも「サントリーの鳥井さん」ということで会ってもらえる社外の方もいるだろう。そういった利点はある。創業家であることを嫌がるような人は、そもそもこの場にいる意味がない。

――サントリーHDの大株主は鳥井さんが社長を務める寿不動産です。オーナー目線で見た時に、現在のサントリーをどう考えていますか。

今のところは「no more no less(それ以上でもそれ以下でもない)」。過去は売り上げの9割程度を日本国内に依存し、ポートフォリオがやや偏っていた。それは(2014年のアメリカ蒸留酒大手のビーム社統合などによる)事業地域の拡大や飲料事業の成長などで変わってきた。

各地域・事業でいろいろな成長の土台が出来上がっているので、それぞれでオーガニックな成長を目指していく時期だ。ホールディングスとしては、これ以上何かをM&A(合併・買収)したり、売却したりするというタイミングだとは考えていない。(海外進出など)うまくいっていて、サントリーは「運のええ会社」だな、と。

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