東京都「広告トラック」規制に歓迎の声多数のワケ 「都外ナンバーは対象外」の抜け穴がふさがれる

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また、広告トラックの騒音を問題視する住民や来訪者も少なくない。これについても「拡声機暴騒音規制条例」によって、音量規制がされている。こうしたことを考え合わせると、今回の規制強化は、「満を持して」決定されたと言ってもよいだろう。

望まれる都市の魅力を高める「広告トラック」

ここ数年、屋外広告も大きく変化、進歩している。外国人の観光スポットとして知られる渋谷のスクランブル交差点、およびその周辺エリアには、大型モニターが増え、まさにサイバーシティ東京を象徴するような都市景観となっている。

新宿においても、新宿東宝ビル8階から突き出したゴジラヘッドや、「3D巨大猫」で話題になった、新宿東口の3D屋外広告「クロス新宿ビジョン」など、エンターテインメント感満載の「屋外広告」が設置されている。

いまは風俗系に占領されてしまっている広告トラックにおいても、2012年に映画『貞子3D』の宣伝として「巨大貞子」を乗せたトラックを走らせて、大きな話題になったりと、過去に面白い展開も見られる。

広告トラックではないが、都営バスの車体のラッピング広告では、タイヤをカメラのレンズに見立てたヨドバシカメラの広告が掲出されている。

車両を活用した広告は、アイデア次第で面白い展開がいくらでもできるはずだ。

 ヨーロッパの都市を歩くと、整然とした都市景観に憧れを感じもするし、日本においても景観条例によって厳しく規制された京都のような古都の街並みに安らぎを感じたりもする。しかしながら、古いものと最先端のものが混然一体となりながら、変幻自在に姿を変えていくところが、他国にはない、日本の大都市の魅力であるとも思う。

ルールを守りながらも、創意工夫を凝らして、面白い媒体や表現を開発して、街行く人々を楽しませてもらいたいし、規制を行う自治体側も、それを実現するような適正な規制が行われていくことを望みたい。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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