一方で、ウクライナ軍の大規模反攻作戦は当初、2023年3月にも始まるとみられていたが、ずれ込んでいる。同年1月末以降、米欧からの軍事支援がドイツ製主力戦車レオパルトなど質量ともに大幅に拡充し始めたことを受け、ウクライナ側がこうした武器が到着するのを待ってから開始する戦略に切り替えたことが遅れの第1の技術的要因だ。
もう1つの大きな要因は、今回の反攻作戦が、年内の全領土奪還と対ロ軍事的勝利に向けた、1回限りの最後のチャンスとみるウクライナ側が、より慎重に準備を進めていることが挙げられる。
軍事筋は「これに失敗したら、アメリカから(ロシアとの停戦と妥協に向け)タオルを投げ入れられる可能性もある」との危機感を示すほどだ。現時点で反攻開始の時期は公表されていない。ウクライナのメディアに対しても、侵攻計画の事前報道に関して事実上の「ギャグ・オーダー(箝口令)」が掛けられている。ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は、大規模攻勢について政府内で「開始時期など情報を持っている人物は3~5人だ」と明かしたほどだ。
ウクライナ軍の大規模反攻は4~5月か
それでも、反攻は2023年4月か5月には始まるとみられている。しかし、反攻作戦の開始場所は明らかにされていない。レズニコフ国防相は3カ所と語ったのみだ。当初、反攻作戦は1カ所で始まるといわれ、南部ザポリージャ州の要衝メリトポリが攻撃対象となるといわれてきた。
しかし、その後、ターゲットは複数に増えたが、米欧から供与された戦車など兵器の配備先も発表されていない。ロシア軍に手の内を見せず、防御網を必要以上に薄く広く、延ばす狙いだ。
とは言え、メリトポリが最初の標的にひとつになるのは確実だ。クリミア半島へ南下する鉄道・道路の結節点で、反攻の最終的な目標であるクリミア奪還を早期に実現するうえで欠かせない都市だからだ。
ロシア本土とクリミア半島を結ぶ輸送回廊の重要拠点であり、ウクライナがここを確保すれば、ロシア軍は補給の大動脈を失うことになる。ウクライナ軍はすでに高機動ロケット砲、ハイマースなどでメリトポリに砲撃を加え、制圧への下準備を始めている。
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