さらに、実際にベラルーシに配備しても同軍事筋は「反転攻勢をとめる抑止力にはならない」と指摘する。「根本的な勘違いをプーチン氏はしている」というのだ。
なぜなら、ベラルーシでロシア軍が戦術核を発射しようという動きを見せれば、「アメリカがその段階で事前に通常兵器で攻撃するのは確実だ」と軍事筋は言う。戦術核は普段は弾頭部分を倉庫に保管し、使用する直前にミサイルに装着するために倉庫からミサイルまで運搬する。
ロシア国内の場合、戦術核の弾頭が保管場所から発射場所まで移送された場合、アメリカは動きを確実に捕捉できる。今後ベラルーシに発射基地と保管場所を新設しても、アメリカはロシア国内と同様に発射準備の動きを事前に探知できるという。
「これが、クリミアに戦術核を配備するのであれば一定の抑止効果はあるだろうが、ベラルーシの場合、アメリカを含むNATOは攻撃をためらわないだろう」と言う。この場合、ウクライナも同様にベラルーシを攻撃するのは間違いないと同筋は強調する。
習近平を怒らせたプーチン
その場合、ロシアはどう行動するのか。同筋は「ロシアがベラルーシを守るために参戦するとは思えない」と指摘。結局、今回のベラルーシへの戦術核配備発表は、軍事的に大きな脅威と映っていないという。
さらにプーチン氏には、より大きな外交上の誤算があった。2023年3月末の中ロ首脳会談で、訪ロした習近平・国家主席がプーチン氏からの武器供与要請を断ったからだ。外交筋によると、プーチン氏は会談で再三、武器供与を習主席に求め、主席に不快な思いをさせたという。
もともと、事務方の事前協議で中国側は、供与を求めたロシア側に対し、明確に拒否の方針を伝えていた。それにもかかわらず、プーチン氏が面と向かって供与を求めたことで習主席が立腹する原因になったという。
さらに習主席のメンツをつぶすことも起きた。首脳会談の結果として署名した共同声明で、国外に核兵器を配備しないことなどを明記したにもかかわらず、その数日後にベラルーシへの戦術核配備をプーチン氏が発表したからだ。
今回の共同声明で中ロは戦略的協力と包括的パートナー関係深化をうたったが、同外交筋は「中ロが準同盟関係を維持しているのはアメリカをにらんだ太平洋地域の話。ウクライナ問題をめぐっては、この1年間で隙間風が吹いている」と指摘する。
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