揺れるアメリカで「まさかの6月危機」はあるのか 今は2011年の「オバマ政権3年目」と似ている

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アメリカの銀行2行の破綻に対して、FRB(連邦準備制度理事会)は「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」なる対策を打ち出した。これは銀行が保有する債券を引き受けて、1年間、額面で資金を供給するというもの。もちろん時価では額面割れしているはずなのだが、この際そんなことは言っていられない。預金者の資金も全額保護します、という気前の良さだ。

「BTFP」でFRBのバランスシートは再拡大

その結果、何が起きているのか。FRBが毎週1回、公開しているバランスシートのグラフをご覧願いたい 。ちょうど1年前の3月からQT(量的引き締め政策)が始まり、総資産額は順調に減り続けてきた。2022年3月21日の8兆9624億ドルをピークに、今年3月6日には8兆3422億ドルまで減っている。

ところがその後は2週連続で増加に転じ、3月20日には8兆7337億ドルまで戻っている。左の手でQTをやりながら、右の手ではBTFPで市場に流動性を供給しているのだ。なるほどこれでは株価も上がるだろうが、インフレ抑制にはマイナスとなるのではないだろうか。

ともあれ、今回の一連の金融不安劇はせいぜい第1部を終えたところではないかと思う。なんとなれば、これをどういう名前で呼ぶかがまだ定まっていない。今はまだマスメディアも、「相次ぐ銀行の経営破綻」などという曖昧な呼び方をしている。いわば「戒名」が決まっていないのだ。ここは「サブプライム問題」とか「リーマンショック」とか「ブラックマンデー」とか、全体をくくる名称が欲しいところである。

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