揺れるアメリカで「まさかの6月危機」はあるのか 今は2011年の「オバマ政権3年目」と似ている

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私見ながら今回の事態は、以下のような長い物語の中で位置づけられるべきなのではないかと思う。

第1幕:2020年春にパンデミック対応のため、各国が盛大な金融緩和と財政出動を実施。アメリカ国民の旺盛な「巣ごもり消費」により、世界のサプライチェーンに混乱が生じた。
第2幕:2021年春から、欧米経済において約40年ぶりとなるインフレが発生。ところが、中央銀行がそれに気づくのは約半年遅れた。
第3幕:2022年春からFRBやECB(欧州中央銀行)が利上げを開始した。わずか1年で政策金利であるFFレートはゼロから5%近くにまでハネ上がった。
第4幕:2023年春に銀行の経営破綻が相次ぐ。長期金利の上昇に伴ってアメリカ国債の価格が低下し、危なそうな銀行からの預金の流出が止まらなくなっている。

債務上限問題と銀行破綻処理が結びつく危険性 

こうして見ると、なんだか春が来るたびに新たな危機のステージを迎えているようである。してみると、次は2024年の春が危ないのだろうか。

いやいや、その前に気がかりなことが1つある。それはアメリカの債務上限問題だ。ネタ自体は「いつものこと」なのだが、これが銀行の破綻処理問題と結びついたりすると、非常に厄介なことになる。

ジャネット・イエレン財務長官が明言しているとおり、同国債はすでに今年1月19日に法律上の上限である31兆3810億ドルに達している。ゆえに新たな発行ができなくなっている。

そこで議会に対して至急、債務上限を上げるように要望しているのだが、今年1月から下院は共和党が多数となっている。彼らは、財政支出の削減がなければ応じられないと言っている。そして毎度のことながら、こういう問題は締め切りが迫ってこないと議員さんたちは動いてくれないのである。

現在は同国の財務省が急がない支出を後回しにしたり、退職者年金の積み立てを止めたり、やりくりをしながら資金ショートを防いでいる。そして今後の税収の多寡などにもよるのだが、6月上旬にはいよいよ誤魔化しきれない瞬間がやってくる。

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