背水のヨーカ堂「総合スーパー」が苦しむ納得事情 食品事業への集中でスーパーはどう変わるか
しかし、首都圏以外、お隣の北関東地域でも主要な買い物手段はクルマであり、住民の機動力は首都圏より高い。つまり、日々の食べ物を買いに行く範囲は、首都圏は半径500~800m程度であるのに対し、地方は半径4~5㎞程度と5~10倍になる。面積にすれば25~100倍(≒競合店舗が圧倒的に多い)になり、乱暴に言うなら、首都圏の食品流通の競争環境は比較的「緩い」のだ。
そのうえ、首都圏の人口密集地には地方、郊外のような広い空き地もなく、出店するのもそう簡単ではない。ということは、首都圏なら駅前、駅近の一等地を先に押さえていることが、食品流通における最大の競争力を意味する。
この点において、東京発祥の老舗であるイトーヨーカ堂の店舗網は、首都圏の一等地を押さえていることに関しては、民鉄系スーパーを上回る、といってもいい。一般的に、食品スーパーの競争環境は人口減少による市場縮小を前提に、同業間に加えて、ドラッグストアなど異業種との競争が激化していると言われるが、首都圏はそうでもないのだ。
セブン&アイの「食」に関する存在感
首都圏人口はしばらく今の水準を下回らないうえに、食品強化型のドラッグストアなども首都圏には多くはない。出店余地があまりないので、大型競合店ができる数が地方に比べて圧倒的に少ない。そもそも、イトーヨーカ堂をはじめとするセブン&アイが統合予定のスーパーの売り上げ規模は、地域シェアトップクラスなのである。
参考ながら、セブン-イレブンの首都圏店舗は6722店(2022年2月期)あり、平均日販64万6000円、約7割が食品売上ということから、ざっくり計算すると、その流通額は約1兆1000億円。スーパーと合わせて1兆8000億円の食品流通規模は、首都圏食品では圧倒的なトップシェアとなることは言うまでもない。コンビニとスーパーを連携させることがもしできたとすれば、セブン&アイの食に関する首都圏での存在感は圧倒的なものになる。
セブン&アイの首都圏での食に関する構想には、計画段階ながら「SIPストア」という新業態による成長戦略も描かれている。コンビニとスーパーの間の規模(500㎡程度)の中型のスーパーを開発して、このタイプを展開していくことで、出店余地の少ない首都圏の隙間を埋めていこうという構想で、これも理屈としては十分に成立する話なのだ。
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