背水のヨーカ堂「総合スーパー」が苦しむ納得事情 食品事業への集中でスーパーはどう変わるか

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総合スーパーのかつての基本的な収益構造は、購買頻度の高い食品を低価格販売することで来店してもらって、ついでに利益率の高い衣料品、生活雑貨などの非食品も買ってもらうことで、トータルで収益を稼ぐというものだった。

そのため、非食品の売り上げが落ち込んでしまえば、収益がガタ落ちになったのに売場維持コストだけかかる、という状態になることは一目瞭然である。図表からは、食品に関しては店舗数減少などを加味するなら、落ち込みは限定的、ということもご理解いただけるだろう。

ということは、非食品売場をテナント(売場コストをテナント負担)に転換すれば、総合スーパーは、食品スーパーを核店舗とした生活必需品の商業施設として生まれ変わることが理論上は可能だ。

この際に問題となるのは、「そのような商業施設にテナントが入ってくれるのか」ということだ。これは核店舗となる食品を売るスーパーの集客力による、と経験則でわかっている。

首都圏食品スーパーの特殊な環境

となれば、この問題は、食品部門に集客力があるか、ということに尽きる。上記を踏まえて、話をイトーヨーカ堂に戻せば、食品事業への集中によって集客と収益力を確保できるか、ということがやはりカギを握っている。

集客について言うならば、まずは首都圏食品スーパーの競争環境とイトーヨーカ堂の立地特性を理解する必要がある。国内の小売マーケットにおいて、首都圏、および京阪神だけが、特殊なマーケットであり、日々の買い物の主要移動手段がクルマではない。首都圏住民ならわかると思うが、このエリアでは電車、バスなどの公共交通を軸に、徒歩や自転車で生活しており、特に若年層についてはコストのかかる自家用車を持たない人も少なくない。

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