29歳で「子宮体がん」彼女が赤裸々に発信する中身 闘病、離婚、そして元カレとの再婚

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元カレは、以前付き合っていた頃と比べれば違和感は多少あるが、それが何かと言われれば明確ではない、などと誠実に答えていく。

「本当に嫌なときの『痛い』表情とか反応と、そうでもないときの反応の違いを、自分がよく見ていないと後で事故につながる。だから自分のことだけに没頭しないことが大切で、でも当然、それは(がんであろうとなかろうと)当たり前のことなんだけどね」(元カレ)

彼の誠実さや愛情が確かに脈打っていた。ヒダノさんも彼の発言について今回あらためて語った。

「この動画を撮らなければ、たぶん聞けない(彼の)言葉だったし、彼の人柄がにじみ出ていて、……うれしかったですね」

当たり前だが女性が顔出しで、交際相手との行為について配信する義務などない。だからこそ、約15分間の動画には彼女の「誰かの役に立ちたい」という初心と、不器用なほどの生真面目さがぎゅっとつまっている。

この収録から約10カ月後に2人は入籍し、彼の実家で義父との同居生活が始まった。

テーマは「明日死んでも後悔しない生き方」

YouTuberとしての彼女の活動は主に3つ。各地のがん経験者に会いに出かけた「日本一周の旅」と、卵巣がん経験者ニコさんとのガールズトーク「居酒屋マナニコ」。そして専門家などに質問する「がん患者の悩み」。

日本一周するヒダノさん(左)と、ニコさん(右)(写真:ヒダノさん提供)

例えば、抗がん剤治療で脱毛後のウイッグをテーマに乳がん経験者の女性美容師が、あるいは放射線治療に伴うスキンケアをテーマに、東京大学病院の放射線治療医がゲストとして登場する。  

「あれをやっとけばよかったなって思いながら、ぽっくり逝くのは嫌なんです! でも、難しい言葉はわからないので、(専門家の話でも)自分でもわかるようにして、発信したいなっていうのはあります。(私は)すごい人じゃないし、知識もないんだけど、『こんなヤツでもできるから、(配信をやりたい人がいたら)やったらどう?』って思います」(ヒダノさん)

卵巣がん経験者ニコさんと続ける「居酒屋マナニコ」(写真:ヒダノさん提供)

居酒屋トークライブを一緒に続けるニコさんは、ヒダノさんの魅力についてこう語る。

「本当に普通の女の子がたまたまがんになって、日本一周とか、居酒屋の体裁で生配信とかやっていて、一見しっかりしてそうで、実際に話していると少しおバカなキャラも見え隠れする。そのギャップがフォロワーから愛される理由だと思います」

元祖顔出しのがんYouTuberとして有名になった今も、ヒダノさんは揺れる気持ちを隠そうとしない。

「元気になって『明日もフツーに生きてる』って漠然と思う自分と、『でも、明日死ぬかもしれない』という気持ちを忘れたくない自分も、両方います。だから『明日死んでも後悔しない生き方』が私のテーマ」

正しく知ることはきっと誰かの役に立つ。

専門家などに患者の立場で生真面目に質問するときも、オンライン居酒屋でガールズトークを楽しむときも、ぜんぜんカッコつけない彼女がいる。

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荒川 龍 ルポライター

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あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

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