5年前は彼女のように顔を出して、SNSで情報発信するがん経験者は少なかった。最初の夫と別れたことも、ヒダノさんは隠さずに投稿した。
「『がん検診で違う病気が見つかりました』や、『記事を読んで私も離婚しました。ありがとう』など、いろんなコメントが届いたんです。困っている人の人生に今度は自分が関われていて、幸せとやりがいを感じました」
ブログと並行して、YouTubeでライブ配信を始めたのが2018年4月。
コロナ禍で外出もできなかった時期で、ライブ配信をするとコメントがすぐに書き込まれ、フォロワーとの距離がぐっと近づいた気がした。知り合った同病者たちと会うため、彼女は知人が運転する車で九州や東北などをめぐり、各地の同病者とマスクごしの対面を喜び合った。
そんな頃、以前交際していた元カレと再び会う回数が増えていく。
YouTube動画で確かめた元カレの愛情
2023年1月末時点でヒダノさんは100本以上の動画を作り、1本で最高135万回再生を記録したものもある。チャンネル登録者数1万9600人で、総合計670万回視聴。その中で約1年前、男性の方にもぜひ見てもらいたい、と前置きして配信した1本がある。
「子宮を摘出した後でセックスはできるかというと、セックスはできます。まったく問題なくできます。大丈夫!」
彼女は自身の経験を踏まえてきっぱりと言い切っていた。。「子宮を失った」とか、「子どもを産めないから」という理由で人生の選択肢を自分で狭めてほしくない、という強い思いがあった。
性行為を始めるタイミングについては、摘出時の傷が完治した時点で担当医に確認する必要があると補足。手術前後は濡れにくいこと(2つの卵巣を摘出して女性ホルモンの分泌が減ったため)、痛みが出ること、膣が浅くなったと感じること(子宮と膣はつながっていて、子宮を切除する際に膣も短くなるため)などを体験談として挙げた。
さらに行為の際は今も痛みを感じること。ヒダノさん自身は未使用だが、行為前に医薬品の潤滑ゼリーを女性が使う選択肢もある、とも助言した。
画面が切り替わると、彼女の背後でソファにあぐらを組んで座る3歳上の元カレ(交際復活から約1年後)が、顔を出さずに登場。手持ちぶさたなのか、全長20cm大の水色のドラえもんのぬいぐるみを持っている。
ヒダノさんが少し硬い表情で、彼に自分との行為について、努めて淡々と質問をしていく。2人だけでも相手に尋ねるのに勇気がいることを、不特定多数に公開で行うことの緊張感が、画面にもみなぎっていた。
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