京セラ稲盛氏が中途入社組の疑問に答えた「言葉」 「社長、おかしいじゃないですか?この会社」

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1982年、京セラ経営方針発表会の決起コンパにて、稲盛和夫氏の語りを身を乗り出して聴き入る社員たち。むせかえるような熱気が伝わる(写真:京セラ)
稲盛和夫氏は常に社員のベクトルを合わせ、会社全体が同じ方向を向くことを重んじてきた。稲盛氏のもと、京セラとKDDIで副社長を務めた山本正博氏は、京セラに転職してきた際にはその厳しい規律に驚き、すぐ疑問を感じた。
稲盛氏の情熱の思想を、未発表の文献と関係者13人ヘのインタビューで綴った新刊『熱くなれ 稲盛和夫 魂の瞬間』から、当時のエピソードを一部抜粋して紹介する。

「社長、おかしいじゃないですか、この会社は」

京セラには中途入社で入りました。それまでは11年間、旭化成にいて、2〜3年ごとに転勤する生活でした。私は長男だったので、大阪に住む両親の面倒を見ながら働ける会社はないかと探していました。そんなときに、発展期だった京セラが中堅幹部募集の新聞広告を出したんです。

当時の日本では、転職すると一生うだつが上がらない危険がある、というのが常識でした。だから、うかつに転職なんかできなかった。出世しようと思ったら、ずっと同じ会社にいるのが一番いい。そんな時代だったんですが、私にしてみれば、家の事情でそうは言っていられなかった。でも、結果的には京セラに転職して本当によかったんです。周囲からも、そう言われました。

同じ年に確か、55人が中途入社で入りましてね。みんな他社を経験している。そうすると、“京セラ流”にびっくりするわけです。昔の軍隊みたいに整列する朝礼があったり、体操があったり。ずっと京セラにいた人は慣れてますからなんとも思いませんが、55人は「なんだ、この会社は」とそら思いますわな。私も思ったんです。

ちょうど入社後1カ月経って、コンパが行われました。当時は山科に本社ビルがあり、その5階に大きな和室があって、焼酎を飲みながらみんなでざっくばらんに話し合うという、中途入社組にとっては、初めての京セラ流コンパでした。

最初に稲盛さんから、こう挨拶があったんです。「皆さん1カ月経って、だいぶ慣れられたと思います。なんかご質問があったらどうぞ。私が答えますから」

まだ稲盛さんがどんな人なのか、よく知りません。初めてなので、怖いもの知らずなわけです。それで中途入社組の一人がこう問いかけたんです。

「社長、おかしいじゃないですか、この会社は。朝礼はさせられるわ、体操は無理矢理させられるわ。本来、自由な人間をつかまえて、なんですか、これは」

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