京セラ稲盛氏が中途入社組の疑問に答えた「言葉」 「社長、おかしいじゃないですか?この会社」

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私は聞いていて、「よう言うた」と腹の中で思いながら、稲盛さんはどう答えるんかなぁ、と見ていました。そうすると、開口一番こう言われました。

2022年8月、90歳で逝去した稲盛和夫氏。写真は2008年当時(撮影:神崎順一)

「あなたね、社会と企業を混同してますよ。社会というのはね、あなたが言うようにみんな自由だ。どんな主義主張を持とうがかまわないし、自由に振る舞える。そうでないと、社会はおかしい。

だけど企業ちゅうのはね、社員たちを食べさせて、税金を払って国に貢献して、そして会社を成長させて社員の将来まで保証せんといかん。

そうしようと思ったらね、それなりの企業としての性質ちゅうか意志が要るんです。その意志に従って企業は成長していくんです。だから企業と社会とは別なんですよ。混同したらダメですよ」

驚きました。こんなことを明快にズバリと言う人を、初めて見たからです。そして、言われてみりゃその通りやな、と思いました。

社会はそら自由でないといかん。でも、私たちは社会と企業を混同していた。企業に入っても社会と同じような自由を求めるのは、そらおかしいわな。稲盛さんの言う通りやなぁ、と思ったんです。現在でも、「自分はどこにあっても常に自由だ」と思うばかりに会社とのちょっとした食い違いにトラブったり、悩んだりしている人は結構多いのではないでしょうか。

そこから、すっかり京セラと稲盛さんに、はまり込んじゃった(笑)。このコンパは貴重な経験だったですね。稲盛さんは、ずっと日頃から考えていて、そういう信念があったんでしょう。それはすごいと思いました。

そしてずっとこの調子ですから、どんどん引き込まれるんです。

おしぼりが飛んでくる会議

ただ、普通は簡単に弱音を吐いたりしたら、怒られました。会議では机がコの字形に並べられ、奥に稲盛さん、両側に幹部が並ぶんです。稲盛さんの前には、おしぼりが置かれていて。

稲盛さんの真正面に座って報告をするんですが、おかしなことを言ったりしたら、おしぼりが飛んでくるんです。「バカかー!」と。それで、思わず避けると「避けるな!」と言われる(笑)。それで、まともにくらう。

こういう人だとわかっていますから、怒られるときは素直に怒られようと思う。逃げも隠れもしません。でも、その厳しさや激しさがやっぱり京セラの情熱であり、京セラの強さだったんですよ。

そしてコンパになれば、打って変わる。「山本、お前はな、お前はうちの会社に合(お)うとる」なんて言われるわけですよ。そうすると、またすっかりその気になっちゃうんですよ(笑)。

しかも、焼酎が入って、また熱い話が始まる。少々のことを言っても怒られない。だから、こんなことを聞いたことがありました。

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