「デカルトの二元論」が資本主義を台頭させた理由 生態系の危機といった問題の根底にある存在論

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生物学者は、人間は孤立した生き物ではなく、膨大な数の微生物を体に宿らせ、生理機能をそれらに依存していることを発見した。

精神科医は、植物に囲まれて過ごすことは精神の健康に欠かせず、ある種の植物が複雑なトラウマを癒すことを学んだ。

生態学者(エコロジスト)は、木は不活発などころか、互いとコミュニケーションを取り、土壌中の目に見えない菌糸ネットワークを通じて養分や薬用成分を分かち合っていることを知りつつある。

量子物理学者は、バラバラに見える粒子どうしが、非常に離れていても複雑に絡みあっていることを語る。

地球システム科学者は、地球そのものが超生物のように活動していることを発見した。

これらの知見はすべて、生命の網における人類のポジションについて、わたしたちの考え方を変え、新しい存在論(オントロジー)への道を開いた。

見直すべき人間と世界との関係

地球が生態系の破局へと突き進んでいる今、わたしたちは他の生物界とのつながりという観点から人間を見ることを学び、遠い昔に忘れてしまった神秘を思い出し始めている。

祖先のささやきのようなその秘密は、わたしたちの心の中でいつまでも消えようとしない。

20世紀に環境主義者が唱えていた古めかしい呪文とは大違いだ。環境主義者は「限界」、乏しさ、個人的厳格主義という言葉で自らの考えを語ろうとした。

しかし、限界という概念は、最初からわたしたちを間違った方向へ向かわせる。その概念は、自然は人間と切り離された「外」に存在し、必然的に人間と対峙することを前提とする。

この種の考え方は、人間を苦境に陥らせた二元論的存在論から生まれた。
今わたしたちが必要としているのはまったく別の概念だ。それは限界ではなく相互関連性であり、他の生物との親密さを取り戻すことだ。厳格主義ではなく喜びと友好と楽しさだ。

乏しさではなく大きさであり、人間のコミュニティ、言語、意識の境界を広げることなのだ。

変化を求められているのは経済だけではない。世界と人間の位置づけについて、わたしたちの見方も変えていく必要がある。

(翻訳:野中香方子)

ジェイソン・ヒッケル 経済人類学者

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Jason Hickel

英国王立芸術家協会のフェローで、フルブライト・ヘイズ・プログラムから研究資金を提供されている。エスワティニ(旧スワジランド)出身で、数年間、南アフリカで出稼ぎ労働者と共に暮らし、アパルトヘイト後の搾取と政治的抵抗について研究してきた。近著The Divide: A Brief Guide to Global Inequality and its Solutionsを含む3冊の著書がある。『ガーディアン』紙、アルジャジーラ、『フォーリン・ポリシー』誌に定期的に寄稿し、欧州グリーン・ニューディールの諮問委員を務め、「ランセット 賠償および再分配正義に関する委員会」のメンバーでもある。

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