「デカルトの二元論」が資本主義を台頭させた理由 生態系の危機といった問題の根底にある存在論

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彼らは、人間には自然を支配し利用する当然の権利がある、と説いた。しかし、わたしたちは元々そう考えていたわけではなかった。

6世紀に資本主義に進む道を切り開こうとした人々は、全体論的な世界観を打ち壊し、二元論者になるよう市井の人々を説得したり強制したりしなければならなかった。

二元論は成長のために生命を犠牲にすることに利用されてきたので、現在の生態系の危機に対して深いレベルで責任がある。

精霊信仰(アニミズム)の世界観

しかし二元論はわたしたちが利用できる唯一の考え方ではない。人類学者たちは、歴史の大半を通じて人間は二元論とはまったく異なる存在論、すなわち、広義に精霊信仰(アニミズム)と呼ばれるものに依拠してきたことを、ずいぶん前から指摘している。

長い年月、人間は他の生物界との間に根本的な隔たりを感じていなかった。川、森、動物、植物、さらには地球そのものと相互依存の関係にあると考えていた。

それらを人間と同様に感情を持ち、同じ精神によって動くものと見なし、場合によっては、親類のような近しさを感じていた。

今もアマゾン盆地、ボリビアの高地、マレーシアの森林に生きる人々には、この考え方が脈々と伝わっており、彼らは人間以外の存在――ジャガーから川まで――を「自然」ではなく親類と見なし、関わりあっている。
世界をそのように見るようになると、行動は根本的に変わる。すべての生き物は人間と道義的に同等だという前提から始めれば、それらから何かを簡単に奪ったりできなくなる。

人間の利益のために自然を「資源」として消費することは、道義的に非難されるべき行いであり、奴隷制や人喰いに等しい。

そうする代わりに互恵の精神を持ち、相互扶助の関係を築かなければならない。少なくとも、受け取る以上のものを与える必要がある。

この論理はエコロジー的には価値があるが、資本主義の中心的ロジックに真っ向から対立する。そのロジックとは、奪うこと。さらに重要なこととして、与えるより多くを奪うことだ。このロジックは成長のメカニズムの土台になっている。

かつて啓蒙思想家はアニミズムを、時代遅れで非科学的だとして軽蔑した。さらには資本主義拡大の障壁と見なし、懸命に排除しようとした。
しかし現在では、科学がアニミズムに追いつきつつある。

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