他人事じゃない!日テレ「旧本社跡地開発」の混沌 住民が猛反発、町会長が訴えられる異例の事態に
訴状によると、2019年以降の複数回にわたりグロービス側から町会の理事への立候補の意向を示したが、これが拒否されたと主張。また、二番町町会の2022年定時総会についても、書面総会となったことで堀氏が意見を述べて疑義を質す機会を奪われたとして、慰謝料50万円などを求めている。
堀氏の代理人である大城聡弁護士は、「町会はまちづくりを考えるうえで重要な場だ。そこで異なる意見が排除されているのは、都市計画行政を大きく歪めるものだ」と強調する。
住民が千代田区に反対するだけでなく、町会長が訴えられるという場外戦まで発展するなど、都市計画案をめぐる対立が泥沼化しつつある千代田区の日本テレビHD旧本社跡地の再開発。この事例は画一的な容積緩和による再開発が限界を迎えつつあることを示している。
これまで再開発では、広場などの公共施設を新たに作る事業者に対して、一律の運用基準で容積率を緩和してきた。例えば、日本テレビHDの都市計画案では、広場や地下鉄通路の拡幅など、基準に合致する空地や基盤整備に応じて容積率が積み上がる。
自治体からすれば、再開発事業者の費用負担で公共施設や交通インフラの整備をできるため、地域の環境整備にかかる費用をおさえられるメリットがある。デベロッパーなどの再開発事業者も、容積緩和で床面積を拡大して収益化できるフロア数を増やすことで建設コストなどの事業費を賄い、利益を上げることが可能となる。
地域社会にとって「足かせ」となりかねない
ただ、容積緩和で利益を稼げるのは需要の高い都心部にほぼ限られる。
国土交通省によれば、2013年から2017年までの5年間で完了した市街地再開発のうち、延べ床面積で約15.4万ヘクタール(全体の65.3%)が東京都心8区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区、台東区、豊島区)や名古屋市内、そして大阪市内など都心部での案件だった。一方、地方都市での市街地再開発は約2.5万ヘクタール(全体の10.7%)に過ぎない。
市街地再開発事業で作られた施設や建物のうち、地権者が取得する権利のある床(権利床)以外の床面積を保留床と呼ばれる。再開発事業者は、保留床を貸したり売却することで収益を稼いできた。
市街地再開発のコンサルタント業務を手がける不動産会社の幹部は、「東京都心と違い地方都市は需要が少ない。東北のある再開発案件では保留床を買ってくれるデベロッパーがいなくて苦労した」とこぼす。
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