他人事じゃない!日テレ「旧本社跡地開発」の混沌 住民が猛反発、町会長が訴えられる異例の事態に

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千代田区は再開発等促進特区を適用することで、日本テレビHDに90メートルのビルの開発を認めた。容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)も最大で約778%にまで緩和される。

開発エリアから最寄りの東京メトロ有楽町線「麴町駅」番町口のバリアフリー化や、公共の広場の整備などを日本テレビに求める代わりに、高さと容積率の制限を緩和したというわけだ。現在、日本テレビHDは容積率700%で高さ90メートルのビルを計画しており、これは二番町エリアの既存建物の1.5倍の高さになる。

千代田区の担当者は、「バリアフリー化などの政策的課題を解消するため、広場などを設ける日本テレビHDの都市計画案は生活環境を向上させるものと判断した。容積率700%も妥当であり、住生活の環境改善につながるため、ぜひ開発を進めるべき」と話す。

他方、これに住民は猛反発。「番町の町並みを守る会」が設立され、日本テレビHDの都市計画案の見直しや住民意見の反映を千代田区に求めている。

番町の町並みを守る会の共同代表であり、ビジネススクール運営などを手がけるグロービス(本社は東京都千代田区二番町)の堀義人・代表取締役は、「強引な都市開発で、一企業のためにエリア全体が不利益を被るのは見逃せない。こんな理不尽がまかり通ってよいのか」と訴える。

2022年1月に日本テレビ放送網が取得した旧トラック健保会館の跡地。千代田区の四番町では、他にも複数の土地を日本テレビ放送網が保有している。(記者撮影)

日本テレビHDの主要子会社の日本テレビ放送網は、近隣の四番町エリアでも2010年以降に複数の土地を取得している。2022年1月には、東京トラック事業健康保険組合が保有する土地を取得した。ある審議会メンバーは「地区計画を変えずに日本テレビの都市計画案で建物の高さ制限の突破を許せば、四番町など周辺でもドミノ現象が起きるのではないか。都市計画は、もっと長い目と広い視点で考えるべきだ」と話す。

町会長が訴えられる異例の事態

そうした中、2023年3月16日には、グロービスと堀氏が千代田区の二番町町会と町会長に対する訴訟を東京地裁に起こした。

個人が再開発計画をめぐって町会長を訴えるのは極めて珍しい。「正当なプロセスを経ないで選任された会長が、地域住民の代表者かのごとく都市計画案の賛否について意見を述べていることに忸怩たる想い(残念な想い)がある。最後の苦渋の決断として司法の場で決議いただき、住民運動の意見が反映される形にしたい」と、グロービスの堀氏は話す。

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