ピロリ菌は気まぐれに胃の壁に病原性を持ったタンパク質を注入します。そして、このタンパク質がきっかけとなって胃炎を起こし、胃がんを生じさせます。
しかし、ピロリ菌は負の側面ばかりの絶対悪のような存在ではありません。ピロリ菌を除菌することで逆流性食道炎になりやすくなったり、アトピー性皮膚炎が増悪したりするケースもあるからです。もしかすると、彼らは胃という住処を与えられたことへの、恩返しのつもりなのかもしれません。
とはいえ、「胃がんのリスクを上昇させる」というデメリットのほうがメリットにくらべて大きすぎるため、基本的にピロリ菌が存在していたら除菌をおすすめします。
実際、エビデンスとして除菌の有効性が確立されているわけではないものの、たとえばアメリカの退役軍人37万人を対象にした研究では、ピロリ菌除菌によって胃がんのリスク低下が示されています。
なにより、胃がんのリスクを上げるとされている菌が住み着いていると知ったら、自分の胃の中で飼いならしていこうという気分にはならないでしょう。
ピロリ菌の存在の有無は、血液検査や尿検査などで確認することができます。検査で存在が確認された場合は、抗生物質を内服して治療を開始します。
余談ですが、うにやいくらなどの魚卵をはじめとした食品には食塩が多く含まれています。塩分の摂りすぎは胃がんのリスクを上げるという、約4万人の日本人を対象にした研究もあります。食塩の摂りすぎにも注意しましょう。
性行為でうつるウイルス
性行為を通じて感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)や肝炎ウイルスも、がんを引き起こす代表的な感染症です。
性行為は人間の粘膜と粘膜を接触させる行為であり、当然、感染リスクは非常に高くなります。「性感染症」と分類される病気には梅毒、クラミジア、淋病などがありますが、がんに関して注意が必要なのは、HPVと肝炎ウイルスです。
HPVは性行為によって生殖器に住み着き、子宮頸がんの原因となることで有名なウイルスです。HPVに感染し、20代で転移の進んだ状態の子宮頸がんが見つかる場合もあり、婦人科の現場では非常につらい光景を目の当たりにするという、産婦人科医の話も多く聞きます。
HPV感染予防として最も有効なのが「HPVワクチン」ですが、こちらは副反応による接種差し控えなどもありましたので、10代のときに接種をしていない方も多いと思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら