「やられ損?」交通事故の賠償額は驚くほど少ない 被害者の過失が厳しく考慮され通常感覚から乖離

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交通事故にあっても、こうむると思われる損害額がすべて賠償されるわけではない(写真:Rise/PIXTA)
誰でも遭遇する可能性があり、結果が重大なものとなる交通事故。不幸にも被害者になってしまった場合、せめて十分な補償を受けたいところです。しかし、日本では常識的な感覚とはかけ離れた補償しか受けられないのが現状です。元裁判官の瀬木比呂志氏の著著『我が身を守る法律知識』より一部抜粋、再構成のうえ、交通事故は裁判でどのように処理されるかご紹介します。

被害者側にも過失があるとされる

最初に1つ質問をしてみましょう

「あなたやあなたの配偶者、父母、子どもが交通事故にあった場合、常識的にこうむると思われる損害額のほぼ全部が賠償されると思いますか?」

答えは、「全くそうではない」です。

やや古い数字になりますが、2012年度の内閣府の統計によれば、死亡事故における自賠責保険(強制保険)、任意保険の各支払額の平均は、それぞれ約2400万円と3600万円です。合わせて6000万円ということですね。これは、おそらく現在でもさして変わらないはずです。少ないでしょう?

なぜ、そういうことになるのでしょうか?

それは、

① 交通事故事案における損害賠償額の算定基準が定型化されていて、それぞれの項目の算定方法や相場が決まっていること。

② 損害の大きな部分となる逸失利益(将来の失われた収入)や重大な後遺障害のための介護費については、いずれも中間利息が控除されるところ、これは法定利率(2023年2月現在年3パーセント、かつては実に5パーセントでした。民法404条)に基づくため、こうした主要項目の金額が非常に小さなものとなってしまうこと。

③ 多くの事案では被害者側にも過失があるとされて、その割合に応じた損害賠償額の減額、すなわち過失相殺(民法722条2項)がなされるところ、この割合が相当に大きくなる場合が多いこと。

によります。なお、②の「中間利息の控除」というのは、本来であれば将来受け取るはずの金額を現在の時点で一括で受け取るのだから、その間の利息を差し引くというものです。

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