米・キューバ接近で米州の力関係は変わるか 「歴史的会談」を手放しには褒められない
「米国は完璧である、という主張はしない」とオバマ氏は発言。「確かに過去の不満について話し合う時間は十分にあり、国内で発生している政治的な問題の言い訳として米国を利用することもできるだろう。しかし、それでは進展は期待できない。それによって、字を読めない、十分な食糧を得られない子どもたちの問題を解決できるわけではないし、われわれがより生産的になり、競争力を得られるというわけでもない」。
キューバで民主化議論進む可能性も
とはいえ、米国は、ニカラグア、ベネズエラ、エクアドル、パナマなど民主的に選ばれた指導者たちに見え隠れする権威主義の影に目を光らせている。同サミット開催地パナマでは昨夏、リカルド・マルティネリ前大統領による独裁的支配にフラストレーションを持った有権者により、フアン・カルロス・バレーラ氏が新大統領に選出されたばかりだ。
これまで、米州における地域的合意を求める米国の努力は、米国がキューバとの関係正常化を拒絶し、断交していたことが障害となっていた。「この地域には重大な不和が残っているが、キューバ問題が払拭されることで、より多くの指導者が積極的に人権問題や民主化に取り組むことになるのではないか」と、国務省で米州地域を担当していた元高官で、現在はジョージタウン大学の教授のアルトゥーロ・バレンズエラ氏は語る。
同氏は、ブラジルなどの米州における有力国が今後は、ベネズエラの米国に対する強硬姿勢に対抗する可能性があるとの見方を示す。すでに米州サミットでは、ベネズエラにもっとも親しい同盟国以外で、最近の米国の制裁に対する非難に加わる国はわずかしかなかった。
また今回、首脳間では経済機会の拡大や不平等の是正、非政府組織の「市民社会」による基本的自由を求める活動を奨励するといったことも議論されたが、こうした話はメディアの注目をほとんど集めなかったものの、今後はキューバにおいてすら重要になるかもしれない、という。
「人々は独立した市民社会を手に入れるにつれ、内側からの変化を求めるようになる」とバレンズエラ氏は言う。「それが出発点となるだろう」。
(執筆:Randal C. Archibold記者、Julie Hirschfeld Davis記者)
(c) 2015 The New Yoyk Times News Service
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