米・キューバ接近で米州の力関係は変わるか 「歴史的会談」を手放しには褒められない
だが、長期間互いに敵対かつ疲弊し、冷戦時の禁輸措置に困惑した米州地域にとっては、オバマ氏が敵意なく首脳たちに語りかけたことは十分に進展と呼べるものであった。何より大きいのは、今年の米州サミットにおける「空気」の変化である。過去に繰り返されてきた米国への中傷は、カストロ氏がオバマ氏を「誠実で謙虚」であると述べただけでなく、革命のレトリックで図に乗ったことを謝罪したことで消え去った。
今後の課題は、米国がこの地域において蓄積してきた政治的資本を、汚職や刑罰の免除、および民主主義の脆弱性といった問題にどのように利用していくか、である。
米国をスケープゴートにするべきではない
オバマ氏は11日、パナマを発つ際の記者会見でこの点に触れ、米国はキューバの民主化を諦めていない、と発言。「社会がどのように構成されるべきかについては、さまざまな考えがあるが、私はカストロ氏と密に話をしており、民主主義、人権、結社の自由ならびに報道の自由といった問題について話し合うことをやめることはない」と語った。
一方、米国に対しても直接的、間接的にワシントンにおける分裂や、米国自体の正義問題について「自分の家をきちんとしろ」という批判が各国の指導者から寄せられることになるだろう。
「そもそも、ワシントンが何をしようが求めようが反応してこなかった地域が(米州には)少なからずある」と、テキサス大学リンドン・B・ジョンソン公共政策研究科のキューバ、ブラジル専門家であるジュリア・スウェイグ氏は話す。
こうした地域における米国の影響力は、1970年代以降、民主主義の弱体化により縮小している一方、各国とも経済的には成長し続けている(米国が主要な相手国となっている場合が多い)。こうした中、特に米国が高圧的な戦略を講じていると解された場合、各国内における利害が米州地域全体のそれを上回る状態が続いてきている。
今回のサミットでオバマ氏は世界の首相に対して、米国社会の欠点を認識しつつも、過去にこだわることや米国をスケープゴートとして利用すべきではないとの見解を示した。