宇宙に思いを馳せると私たちの本質が見えてくる 観測可能な星の数はビーチの砂つぶの数と同じ

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天の川銀河を100億分の1に縮小すると、ケンタウリ座アルファの3つ星は2つのグレープフルーツと1つのビー玉サイズになり、グレープフルーツサイズの太陽からおよそ4000キロメートル離れたところにあることになります。北アメリカ大陸西側のロサンゼルスにグレープフルーツ(太陽)があって、東側ニューヨークにグレープフルーツ(ケンタウリ座アルファ星系の星)があることを想像してください。人間が休むことなく寝ずに歩き続けて1カ月以上かかる距離です。このように、4光年とはとてつもなく大きな距離なのです。

地球から1等星のシリウスまでの距離は8.6光年、清少納言のお気に入り、昴(すばる=プレアデス星団)までの距離は440光年。私たちが肉眼で見ることのできる星のほとんどは、太陽からおよそ1000光年以内にあります。

天の川銀河の星々は主に円盤状に、中心から渦を巻くように分布しています(図3)。そのことから、天の川銀河は渦巻銀河と言われます。その渦巻を作る複数の腕(わん)の中のひとつ、オリオン腕に、太陽系も、シリウスも、昴も、そして肉眼で見ることができるほぼすべての星々があります。腕の太さはおよそ3500光年、長さはおよそ1万光年です。天の川銀河の円盤の大きさはおよそ10万光年ですから、オリオン腕は天の川銀河のほんの一部に過ぎません。

天の川銀河という大都市の中に、太陽系という私たちの家がある、よって、オリオン腕は町名と言ったところでしょう。町名というよりも西洋都市のストリート(通り)という感覚です。

アンドロメダ銀河までの距離は250万光年

天の川銀河は、運命の友、アンドロメダ銀河と共に局部銀河群というグループに属しています(運命の友である理由はここでは割愛します)。2つの銀河はそれぞれ数十の矮小(ミニ)銀河を周りにひき連れて、全員がお互いの重力でまとまっています。強いて言えば、局部銀河群は複数の近隣市町村をまとめる県みたいなものでしょう。

天の川銀河からアンドロメダ銀河までの距離は250万光年です。250万光年は、光が250万年間、止まることなく、減速することなく、ひたすら進み続ける距離です。私たちの祖先がアフリカで石器を使い始めた頃にアンドロメダ銀河から発せられた光が今ちょうど、地球に届いているのです。私たちの銀河から最も近くにある渦巻銀河でさえ、そんな遠くにあるのです。

局部銀河群はおよそ2000の銀河からなるおとめ座銀河団の一部で、中心までの距離はおよそ6500万光年。さらに、おとめ座銀河団はおよそ100以上の銀河群と数個の銀河団からなる、おとめ座超銀河団の中心に位置します。

おとめ座超銀河団の直径はおよそ1億光年。重力でまとまった銀河の集団が銀河団であり、超銀河団です。おとめ座超銀河団は多くの都道府県からなる国のようなものです。

近年、おとめ座超銀河団はさらに大きな超銀河団、ラニアケア超銀河団の一部であることがわかりました。ラニアケア超銀河団の直径はおよそ5億光年、数百以上の銀河団からなり、4つの大きな超銀河団があります。つまり複数の国々からなる帝国のようなものです。

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