紙おむつ“影の主役” 日本触媒SAPとDNA《下》
もう一つ、燃料電池の電解質であるジルコニアシート・セルだ。10年度150万枚が来年度は300万枚に倍増する。すでに黒字化し、世界のジルコニアシートの大半は、日本触媒が供給している。
が、ここまで来るのに二十余年。供給先のベンチャー企業が倒産したり、一時、開発が行き詰まったり。
あきらめない“しつこさ”が日本触媒のDNAだ。59年、わが国で初めて自社技術による工業化に成功した酸化エチレン。合成繊維の原料になるエチレングリコールに展開し、日本触媒の大黒柱に育ったが、中東から安値のエチレングリコールが大量流入するに至って、10年のうち9年は赤字という惨状になった。普通なら、ここで事業を断念する。
あきらめなかった。コンクリート混和剤など誘導品を幅広く開発する一方、界面活性剤の日本乳化剤を買収し、酸化エチレンの“非エチレングリコール化”比率は8割。日本触媒の酸化エチレンは「先進国で唯一、生き残れるプラント」となった。
“しつこさ”が花の開発にしっかり継承されている。しかも、SAPが稼ぐ成長資金を存分に花に注ぎ込めるのが、日本触媒の強みである。
70年3月、姫路のアクリル酸1号機の運転開始を前に、創業者の八谷泰造元社長が社内報に一文を寄せた。「この春に完成される数々の工場の様相が、さながら贈られるオモチャを夢にまで見る子供の気持ちに似て、春を待つこと切なる心境である。誠に、経営への執念。空恐ろしきかな。神仏も御照覧あれ」。
これが創業者の絶筆となった。日本触媒の新しい春の到来は、そう遠くないかもしれない。
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(撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済2011年3月19日号)
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