紙おむつ“影の主役” 日本触媒SAPとDNA《下》

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15万時間の残業が常態化していた工場で30万時間の作業時間を削減し、クレーム件数、休業災害、設備事故はいずれもゼロ。姫路は余裕でSAP増産を達成し、アクリル酸の市況高騰を享受したのである。

株式市場が総スカン? アジア大投資の意味

その日本触媒が、昨年、株式市場から大ブーイングを浴びた。

昨年8月の公募増資に対して、市場は猛烈な売りで応えたのだ。株価は、発表直前の8月の高値908円が公募価格決定日の8月31日には732円に転げ落ちた。

日本触媒にすれば、公募は「新たな成長宣言」のつもりだった。市場はそうは取らなかった。300億円近い現預金を抱え、なぜ、増資か。希薄化による株価下落=株主のダメージをどう考えているのか──。

増資に先立ち、日本触媒は15年度の経常利益目標300億円、6年間の投資総額1500億円とする長期経営計画を公表している。だが、市場は、利益成長も投資計画も、まるで信用しなかったのだ。

市場が間違えた。この10年度の予想経常利益は290億円。目標を5年前倒しでほぼ達成する。大投資も着々、実行に移されている。発表済みの米国合弁工場のS&B、インドネシアでのSAP新工場(3万トン)の建設に加え、近々、アジアで最低アクリル酸8万トン、SAP6万トンの新設を発表する。さらに15、16年にもう10万トン。投資額はざっと700億円、SAP能力は4割増となる。

大投資は、むろん、中国を含むアジアの成長をにらんでいる。本来なら、姫路製造所のように、アクリル酸とSAPを同じ敷地で生産したい。が、あえて中国にはこの勝利の方程式を持ち込まない。中国でアクリル酸を生産しようとすれば、原料のプロピレンの調達で中国現地の石油化学大手と組まざるをえず、そうなれば、石化大手が必ずSAPの技術移転を要求してくるからだ。

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