「アメリカの歴史は白人が創った」主張に見る過ち ヨーロッパ人入植の背景、国が形成される過程
「世界各地の民族紛争はなぜ起こるのか」「各地の民族はなぜその土地土地に存在し、これからどこへ向かおうとしているのか」――。民族にまつわるそうした疑問に対する答えは、多くは「血統と起源」から探ることができます。そうした視点から人類史を読み解く、著述家の宇山卓栄氏の新著『世界「民族」全史』から、今回はアメリカの歴史をひもときます。
17世紀の前半から、イギリス人のみならず、オランダ人やフランス人などの他のヨーロッパ人が入植を進めていったものの、入植者の数としては、イギリス人が他を圧倒していました。
荒野を耕し、新天地を開拓するのは想像を絶する苦難で、多くの入植者たちはそれを乗り越えることができませんでした。当初、入植者の多くが過酷な環境に耐えられず、新大陸を去っていきました。
イギリス人が入植を進めた背景
イギリス人入植者たちが自ら進んで、そのような苦難に立ち向かうことができたのは、ピューリタンとしての宗教的情熱があったからです。また、経済的な理由として、フランスやオランダには、肥沃な土地が充分にあり、フランス人やオランダ人はあえて、そこから離れる必要がなかったということも挙げられます。
イギリス人ピューリタンの子孫はWASP(ワスプ)というアメリカ合衆国を主導していく中核層になります。「WASP」はWhite Angro-Saxon Protestantの頭文字をとった略称で、白人でアングロ・サクソン系、プロテスタント信者である人々を指します。
オランダ、ドイツ、北欧のプロテスタントたちも一定数、北米大陸へ移住しており、彼らもまた、ピューリタン入植者と協力して開拓を進めたため、WASPの中でも一定数、アングロ・サクソン系でない白人も含まれています。
彼らは、自らの生存圏を築くことは神から与えられた「マニフェスト・ディスティニー(Manifest Destiny=明白なる使命)」であると考えました。領土拡張は宗教的な使命であり、神の名のもと、異教徒の先住民族を迫害・虐殺することも正当化しました。
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