民衆を治められる君主と寝首かかれる君主の大差 『君主論』が説く、リーダーに求められる振る舞い
変えていいものといけないもの
新しい国を手に入れたことによって、新旧の領土をあわせもつ混合型の国について話そう。そこでは、すべての新しい組織に共通する困難のせいで政変が起きる。共通する困難とは、「リーダーを変えさえすればすべてがよくなっていく」という民衆の思い込みだ。
民衆は武器を手にそれまでの支配者に刃向かうが、そうすればよくなるというのは思い違いに過ぎない。人々は結局のところ、すべてが以前より悪くなっただけだと知ることになるだろう。
新しい領土を獲得して、元の領土に併合するといっても、両方の領土が同じ地域にあって人々が同じ言語を持っている場合とそうでない場合では話が別だ。
前者の場合、とくにその地域の人々が自由な生活に慣れていないときには、新しい領土を保持しつづけるのはとてもたやすい。これまでの君主の血統を絶えさせてしまうだけで、その領土は確実にわがものとなる。風習に大きな違いがない限りは、あとはこれまでの状態を保てるようにすれば、人々は平穏に暮らしていけるからだ。
長年にわたってフランスに併合されてきたノルマンディーなどがこの例である。この地方では言語に多少の違いがあったとしても風習が似ているため、お互いがお互いをすぐに受け入れられた。
新しいリーダーは、以前の統治者の血統を絶やすことに加えて、住民たちの法律や税制を変えないようにすることも必要だ。これらさえ守れば、新しい領土もすぐに古くからある領土と一体化していく。
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