40歳過ぎて保育士になった彼女が見た保育の真実 子どもと大人の世界が混在するカオスの断片

派遣保育士という立場だからこそ見えてきたことは?(写真:msv/PIXTA)
小さな子どもを持つ共働き夫婦にとって、保育園は欠かすことのできない施設だ。また、そこで子どもの面倒を見てくれる保育士も、なくてはならない存在だといえる。しかし、そうでありながら、私たちは保育の現場や保育士について知らなすぎるのではないだろうか?
ちなみに保育士について、『保育士よちよち日記』(三五館シンシャ)の著者、大原綾希子氏は次のように解説している。
私の知っている保育士の多くは、新卒で保育士として採用され、保育現場で悪戦苦闘してきた人たちである。人の命を預かるという重責を背負いながら、保育士たちはギリギリの人員で、到底さばききれない膨大な業務をこなす。事務仕事や催し物関連の作業、会議や研修も多い。子ども一人一人としっかり向き合いたいと思っていても、そうできないことがある。(「まえがき──正解がない仕事」より)
40歳を過ぎて保育士試験に受験、合格
こちらの抱くイメージ以上に状況は過酷そうではあるが、だからこそ「派遣保育士」が大きな役割を担うことになるようだ。なお、その1人である大原氏は、大学卒業後に大手人材派遣会社で広告制作の仕事に携わり、そののち団体職員を経て保育士資格を取得したという異例の経歴の持ち主である。
40歳をすぎて一念発起して保育士試験を受験し、合格した。その後、長年勤めた職場を離れ、保育業界に身を転じた。私は、子育てをひととおり経験するまで他人の子どもを預かることはできない、と考えていたから、わが子がある程度成長するのを見計らって飛び込んだ。シングルマザーとしてワンオペ育児をこなすため、私はあらゆることを取捨選択せざるをえなかった。保育現場もまさにそんな職場だった。(「まえがき──正解がない仕事」より)
比較的遅いスタートだったとはいえ、以後は派遣保育士として十数カ所の認可保育園で働いてきたという。もちろん、いまも現役だ。
とはいえほかの業界と同じように、保育業界にも特有の慣習がある。なにしろ、子どもの世界と大人の世界が混在しているのである。日常的にカオスな状況が訪れたとしてもまったく不思議ではない。
つまり、本書に描かれているのはそうしたカオスの断片である。
そしてそこには、派遣保育士ならではの視点がある。たとえば、冒頭に登場するとある保育園についての描写にもそれは明らかだ。
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