40歳過ぎて保育士になった彼女が見た保育の真実 子どもと大人の世界が混在するカオスの断片

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そういう意味でも、「保育業界で離職を考える人の大半は、人間関係に不満がある」という指摘には充分納得できる。逆にいえば、理不尽な仕事をさせられたとしても、相手が信頼できる上司であればなんとか勤まるということであり、大原氏もそれを実感しているという。

たとえ薄給であっても、人間関係が良好であれば続けられるわけで、これは保育士のみならず、世の中のすべての仕事にあてはまることだともいえそうだ。

ちなみに派遣期間が決まっている場合が多い派遣保育士には、人間関係がリセットしやすいというメリットもあるようだ。大原氏も「淡々とした人間関係を好む私のような人間にはうってつけ」だと述べているが、保育の仕事に携わりたいと思っている方にとって、これは有力な情報かもしれない。

保育士の日常

ところで保育士は、どのような日常を送っているのだろう? 大原氏は自身の平均的な1日を明かしているので、確認してみることにしよう。

朝5時半、日の出とともに目が覚める。今日も目覚まし時計より早く起きてしまった。加齢とともに年々朝の目覚めがよくなっている。
8時半に家を出るまでのあいだ、洗米・炊飯のセット、洗濯、風呂掃除、トイレ掃除、ゴミ集め、弁当づくり、朝食づくり、食器の片づけを淡々とこなしていく。8時に2人の子どもを学校に送り出すまでに、その日の家事の大半を片づけてしまう。シングルマザーでほかに頼る人がいないとなれば、全部自分でするしかない。(103ページより)

そののち出勤し、業務開始時刻の10分前に保育園に入り、9時半から仕事がスタート。集まってきて声をかけてくる子どもたちと他愛ない会話を交わしながら、園児たちの顔色や表情をチェックすることも重要な仕事だ。首筋にそっと手を当て、熱がないかどうか、傷や吹き出物がないかも確認する。

もし子どもの唇にヘルペスがあれば、感染する可能性があるので注意が必要。体調が悪そうな子がいれば、すぐ担任保育士に報告しなければならない。このように、子どもを安全に預かれるかどうかの判断は欠かせないものなのである。

続いてその日の活動の打ち合わせをし、お休みの子、体調の悪い子、早お迎えの子などの情報も共有。

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