アパレル、続々と「セール縮小」に動く納得の裏事情 以前から指摘されていた商慣習の問題に変化

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2020年4月、ファッションデザイナーのジョルジオ・アルマーニは、「この未曾有の危機の中、ファッション業界も難曲に直面しているが、これを乗り越えるには慎重に考えて賢くスローダウンするしかない」というメッセージを発信した。

長期にわたるコロナ禍は、アパレル業界に大きな影響を及ぼした。こらえきれずに消えていった企業もあれば、企業努力によって変革し、成長や進化を遂げたところもある。

今年の正月明けに行われたセールは、ずいぶんと様相が違って見えた。売り場で全面的に行うのではなく、一部で行われており、かつ30%オフ、40%オフなど、値下げ率も高くない。セール品が並んでいる一方で、プロパー(正価商品)も置かれている。

期間についても、1週間程度できっちり終え、だらだらと長期化しているところが少なかった。販売員に話を聞くと、「セール品とプロパー品を並べておくと、正価でも気に入った服を手に入れたいという傾向が見えます」という声が多かった。

一方、アパレル企業側に取材してみると、「売り残しを減らすために過剰な生産を減らした」「半年ごとのサイクルにとらわれず、値下げせずに売り続けている」など、業界の常識にとらわれない改革や挑戦を行っていることがわかった。

大変革期とも言えるこの時期を、アパレルはどう乗り越えようとしているのか。好事例となりうるブランド企業を取材した。

抜本的な見直しに動き出したビームス

「この業界は売り上げ至上主義という慣習のようなものがあったと思います」

そう話すのは、セレクトショップの雄であるビームスの取締役経営企画室長を務める池内光氏だ。売り上げを求めて生産過剰となり、セールにかけるものの利益率は下がるという悪循環が続いていた。セールで売り上げを上げるため、通常の商品とは別に、セール専用の商品を作っているブランドも少なくはない。

「5年前くらいから、そこに何とか歯止めをかけないと」と考えてはいたものの、「2019年までは、右肩上がりの成長が続いていたので、本気度が足りなかったと反省しています」と正直なコメントが返ってきた。

それがコロナ禍によって、抜本的な見直しをせざるをえなくなった。

「売り上げを追うばかりではなく、適正な利益確保を目指し、コロナ禍以前から準備してきたさまざまな改善をはかってきました」(池内氏)

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