季節の変わり目でもあり、進学・就職・異動など環境の変化も多い春は、体調を崩しやすい季節です。体の不調もそうですが、心の不調も起きやすい時期でもあります。
今回は、筆者の“うつ”体験をご紹介しようと思います。
体にまったく力が入らない
あれは、アスリートとして真摯にマラソンに取り組んでいた、20代の半ばの出来事でした。夏の暑さも和らいださわやかな初秋の朝、本当に気持ちのいい日だったと記憶しています。
朝6時半ごろに目が覚め、いつものようにベッドから起き上がろうとしたのですが、体に力がまったく入りません。
自分の体にいったいなにが起きたのか、にわかには理解できませんでした。どうすることもできず、数時間そのまま横になっていました。解決策を考える意欲も湧かず、まるで、体の芯である背骨がするんと抜け落ちたような感じでした。
それから数日間は食欲も動く気力もなく、ただ天井を見上げ、わずかな食事とトイレで用を足すだけの時間を過ごしました。気力も体力も最高に充実した年齢であるはずなのに、生きるエネルギーが枯渇していたのです。
冷蔵庫の食料も徐々になくなりましたが、食欲がないので買い物に行く気さえ起きません。精神科で受診はしなかったので、実際に“うつ”だったかどうかはわかりません。でも、間違いなく心の病気だったと思います。
振り返ってみると原因はありました。複合的、かつ根深い心のストレスです。
その年はマラソンランナーとして大きな転機があり、オリンピックを目指す決意を固めていました。そして、いろんな人に助けられながら数カ月におよぶ厳しいトレーニングや、海外合宿を敢行しました。そしてすべての準備を終えた3月、満を持して目標のレースに挑みました。選手生命を賭けた大切なレースです。
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