金哲彦氏「20代の挫折で鬱状態」乗り越えられた訳 プロランニングコーチが語る「心の病と走る事」

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プロランニングコーチの金さんが20代のときに経験した「うつ」について語りました。写真は日常のトレーニング風景(写真:筆者提供)
足を蹴り上げ、腕を大きく振る――。この「走る」というシンプルな動作に隠されている心とのさまざまなつながりを、プロランニングコーチの金哲彦さんがひもとく本連載。今回は自身の体験から「心の病とランニング」についてお伝えします。

季節の変わり目でもあり、進学・就職・異動など環境の変化も多い春は、体調を崩しやすい季節です。体の不調もそうですが、心の不調も起きやすい時期でもあります。

今回は、筆者の“うつ”体験をご紹介しようと思います。

体にまったく力が入らない

あれは、アスリートとして真摯にマラソンに取り組んでいた、20代の半ばの出来事でした。夏の暑さも和らいださわやかな初秋の朝、本当に気持ちのいい日だったと記憶しています。

朝6時半ごろに目が覚め、いつものようにベッドから起き上がろうとしたのですが、体に力がまったく入りません。

自分の体にいったいなにが起きたのか、にわかには理解できませんでした。どうすることもできず、数時間そのまま横になっていました。解決策を考える意欲も湧かず、まるで、体の芯である背骨がするんと抜け落ちたような感じでした。

それから数日間は食欲も動く気力もなく、ただ天井を見上げ、わずかな食事とトイレで用を足すだけの時間を過ごしました。気力も体力も最高に充実した年齢であるはずなのに、生きるエネルギーが枯渇していたのです。

冷蔵庫の食料も徐々になくなりましたが、食欲がないので買い物に行く気さえ起きません。精神科で受診はしなかったので、実際に“うつ”だったかどうかはわかりません。でも、間違いなく心の病気だったと思います。

振り返ってみると原因はありました。複合的、かつ根深い心のストレスです。

その年はマラソンランナーとして大きな転機があり、オリンピックを目指す決意を固めていました。そして、いろんな人に助けられながら数カ月におよぶ厳しいトレーニングや、海外合宿を敢行しました。そしてすべての準備を終えた3月、満を持して目標のレースに挑みました。選手生命を賭けた大切なレースです。

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