川内原発再稼働へ、募る地元の不安と疑念 九電はこれまでに進めた安全対策を誇示

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原発が立地する薩摩川内市中心部の商店街はシャッター街化が進む

川内駅近くで商店を営む70代の男性は、「賛否両論いろいろあって、何とも言えない」と語りつつ、商店街を指さす。「見てごらん、このシャッター街。もう原発に頼れる状況じゃないよ」

人通りはまばらで、数百メートルある商店街の端から端までが見通せる。ざっと半分近くは空き店舗の状態だ。13年秋の富士通の工場撤退も影響が大きかったのだという。原発が再稼働したところで、もはや町の活性化は難しいと、この店主は考えている。

「すっかり夜の街になってしまった」。洋品店の女性店主は嘆く。通りで目立つのは、原発関係者が利用するホテルや居酒屋、スナックばかり。「原発が再稼働しても期待できない。昔は原発の社員が家族と一緒に住んで活気があったが、今はみんな単身赴任。たまに小さい子ども連れを見るとホッとする」と話す。

九州新幹線の川内駅が04年にできたのはいいが、それがむしろ鹿児島市や熊本県内などへの住民の流出を加速させているとも聞く。薩摩川内市の人口は現在約9万8000人だが、過去10年で6%近く減った。

「箱物ばかりできても町は自立できない」

原発立地以来、国と県からの電源交付金は250億円を上回り、九電が市に納めた固定資産税も500億円を超す。市内には総合体育館や野球場、国際交流センター、まごころ文学館、歴史資料館、地区コミュニティセンターなど、原発マネーを注ぎ込んで建てられた施設が数多い。

「箱物ばかりできても、町の自立には役立っていない」と話すのは、草の根で脱原発の活動を続ける市民グループの鳥原良子代表。「市の商工会も相変わらず原発頼みで、観光業などを通じた町おこしをやる気がない。自立できる町でなければ若者も定着しない」。

昨年6月に市民グループが市民約1万7000人を対象に行ったアンケートで、回答数約1100のうち85%が再稼働に反対だった。事故や使用済み核燃料の処分問題など、健康への影響を不安視する住民が多い。

一方、市議会は議員の約8割が推進派で、昨年10月末に市長ととともに再稼働に同意した。「議会と一般市民の間にねじれ現象がある」と鳥原氏は言う。

昨年秋に市内で開かれた審査結果に関する住民説明会に参加した女性は、「1年以上、審査したのに説明会は1時間半で終わり。資料だけ立派だったが、不安の解消には程遠い」と話す。「福島をじっと見つめている人は再稼働に反対のはず。ただ、自分の親戚や知り合いに原発関係者がいる人が多く、本音をあまり口にしないのでは」と言う。

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