山側の高台では免震重要棟が建設中だった。免震重要棟は放射線管理機能と通信情報設備を備えた緊急時対策所であり、福島事故後に当時の東京電力社長が「あれがなかったらと思うとゾッとする」と国会で言及した施設だ。九電は2015年度中の完成を目指しているが、現状はまだ基礎工事中だ。
免震重要棟の整備は再稼働時の要件とはならなかったのだ。その完成までは、免震ではなく耐震性能にとどまる仮設の対策所で代替できるとされた。その代替施設は広さ180平方メートルで、100人が1週間寝泊まりできるというが、実際に入ってみるとかなり狭く感じる。
「世界的に見ても最高に厳しい基準に適合したので、十分な安全性を有している」。九電の古城悟・川内原子力総合事務所長は安全対策に自信を示す。訓練は震災後に400回に及び、震災前は12人体制だった宿直体制も52人に増やすという。「使用前検査で総点検して再稼働に備えたい」と古城氏は語った。
原発頼みで活力失う地元・薩摩川内市
九電は安全対策を誇示するが、周辺住民らは原発再稼働をどのように考えているのだろうか。
川内原発が立地する薩摩川内市のタクシー運転手は「再稼働を待ちに待っていた」と話す。「原発が止まって、客は半減した。再稼働すれば、1年の半分近くは定期検査で業者が集まるので、客が増える」と期待する。
ホテルの経営者は、「大震災後に原発が止まった時は客数が激減した。去年から安全対策の工事関係者が増えて、満室の日も増えてきた。再稼働すれば定期検査の時に満室になる」とやはり再稼働に期待を寄せる。
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