そもそも朝令暮改とは、命令や政令などが頻繁に変更されて安定しないこと。朝、出した指示が夕方にはもう改められる状態だと、「うちの社長は朝令暮改ばかり」と、ネガティブな意味で使う場合が大半です。
確かに仕事で朝令暮改ばかりでは困る人も多いはず。逆に、発言がブレず首尾一貫している上司は、一緒に仕事がしやすいものです。マイナビの調査でも尊敬する上司像として
・ブレない
・一本筋が通っている
といった首尾一貫を求めるワードがたくさん登場。それだけ朝令暮改的な上司のマネジメントは、部下からすれば困りものなのでしょう。
経営者レベルでは、「朝令暮改」派が多数?
ただ、そうなるのには理由があります。いちばん多いのは、やはり環境の変化でしょう。冒頭のジャイアンツの話に戻りますが、レギュラーとして起用を想定していた選手にケガが発生。さらに投手陣の不振で、チームは連敗することに。そんなお家の一大事という状況になれば、朝令暮改となるような決断も「致し方ない」と原監督は考えたのでしょう。おそらく、
「方針なんて、コロコロ変わるのが当たり前。むしろ、変えられる勇気をたたえてほしい」
と考えているのではないでしょうか?
ちなみに経営者レベルになると、「この時代に」朝令暮改は当たり前と考える人が大半です。部下たちには、その変化についてくることを期待しています。
たとえば、セブン-イレブン・ジャパンを創設し、現在、セブン&アイ・ホールディングスの会長兼CEOとして巨大流通グループを率いる鈴木敏文会長は、「朝令暮改の発想」という本を書いています。右肩上がりでなく、環境が激変し、1年先、半年先の世の中がどうなっているか、誰にも読めない時代に朝令暮改は悪いことではなく、むしろ、必要な能力。一度発言したことでも環境が変化し、通用しなくなれば、すぐに訂正して方針を示さなければ、変化に取り残されてしまう。朝令暮改を躊躇なくできることが優れたリーダーの条件のひとつ……とさえ書かれています。また鈴木会長だけでなく、日本を代表するような経営者たちは
「朝礼暮改は進歩なのだ」
「朝令暮改をよしとせよ」
「朝令暮改は大いにけっこう」
と肯定派が多くみられます。当方がお目にかかったことのある経営者の中にも、「それこそ経営者の重要な資質。柔軟性や瞬発性を示す行動ではないか?」と肯定する方が比率的に多いように思います。しかも業種や業界、世代による違いはあまり感じられません。おそらく、これからも朝令暮改の経営者と、それを事務的に伝える上司の下、戸惑う部下の縮図は続いていく、むしろ増えていくのかもしれません。
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