伝説の編集長が教える「四季報春号」独自攻略法 春号ならではの特徴をつかみお宝銘柄を発掘

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ただ、季節性要因には注意したい。中には年末商戦で第3四半期に業績が伸びる企業もある。業績自体に勢いがあるのか、特殊な要因で押し上げられただけなのか、過去の傾向などから判断したい。

また、四季報誌面には3カ月ごとの業績は掲載されていないため、気になる銘柄は自身で四半期ごとの業績を計算してほしい。そうすれば「買い」のチャンスに先回りして気づけるようになるだろう。

計算が面倒であれば、誌面の欄外を確認してほしい。上向きの矢印「↑」が2つに、ニコちゃんマークも2つあれば、営業利益予想が会社予想比、前号比ともに30%以上増額していることを表す。足元の勢いを簡単に読み取れる。

PBR1倍割れに注目

足元で注目すべき話題は、東京証券取引所(東証)の企業価値向上をめぐる改革だ。東証はプライム、スタンダード、グロースへ市場を再編し、経過措置の期限も新設した。さらにPBR(株価純資産倍率)が1倍を割る企業へ改善計画をまとめるよう求める方針だ。PBR1倍割れということは、株主からすると理論上は経営を続けるより会社を解散させて残った資産を株主で分けたほうが得になる。

PBRと株価の関係をひもとくと、株価=PBR×BPS(1株当たり純資産)という式で表せる。またPBRはPER(株価収益率)×ROE(自己資本利益率)という式にも分解できる。つまり株価=PER×ROE×BPSという式になる。

PBRを上げるには、ROEが肝となる。ROEを改善するには自己資本を減らす自己株買いや配当による株主還元が手っ取り早い。

時計メーカーのシチズン時計(7762)は、2月13日に発行済み株式数の25%超に当たる最大400億円の自己株買いを発表。その翌日の株価は前日比100円高の718円をつけ、ストップ高で取引を終えた。シチズンは「東証の方針なども考慮して自己株買いの金額を決定した」という。シチズンのPBRはここ数年1倍を割っていたが、足元では1.07倍にまで向上した。自己株買いによって1株当たり利益とROEの改善が期待され、株価は急伸したと思われる。

シチズンのようにPBRが低く自己資本が厚い企業は、東証の改善要求を受けて自己株買いを行う可能性が高く、注目の銘柄となるだろう。

山本 隆行 『会社四季報』元編集長

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やまもと・たかゆき / Takayuki Yamamoto

早稲田大学法学部卒。『週刊東洋経済』編集部に通算10年所属していたこともあるが、記者、編集者としての人生の大半を切った張ったのマーケット中心にささげてきた。『オール投資』『会社四季報』編集長、四季報オンライン編集長を歴任。著書に『伝説の編集長が教える 会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい』。

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