高知東生「虚飾と暴力」を経て辿り着いた安息の地 明かせなかった本名、弱さを隠して暴力に走る

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依存症を克服した高知さんは、依存症の啓発や人が再起していく様子を描く「リカバリーカルチャー」を広める活動に加え、俳優活動やメディア出演を再開するようになった。賛否両論はあるだろう。そのことをただすと――。

「自分に対する否定的な意見も受け入れられるようになりました。自分の中で多様性を認めて、いろいろな考えの人がいるよなって。昔のように自分中心の考えじゃなくなりました。昔だったら、『何だと? お前、表出ろ』って思っていたと思う(笑)」

まだ旧い自分が出てくるときも

一方で、「学びの最中です。生き直しをしている途中」と付け加える。

「たまに旧型の自分がパーンと入ってきて、自分の心の中でケンカしています。出てきた、出てきたって。ただ、昔と違うのは心の中で言い合いができること。昔だったら突発的に行動していただろうし、そうした刺激を男らしく対処する……それこそ暴力などで解決することが格好良さだと思っていた。でも、とんでもないですよね。逃げるべきなんです」

土竜
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弱い自分を受け入れることができたからこそ、逃げることが恥ずかしいことではないとわかった。

「今は楽しくて仕方ないです。新しい自分がいるということは、まだ見ぬ自分がいるわけで成長できるということ。どんな自分が隠れているか楽しみじゃないですか? 小説にしてもそう。編集者から何度も“愛ある赤字”をいただいたけど、まさか自分がこんな小説を書くとは思わなかった。感謝しかない。今は、自分が好きな着たい服を着て、周りから何を言われようと自分らしく生きていける。弱さも、恥も、つらさも、苦しさもすべて自分の一部だとわかりました。だから楽しいんです、今は本当に楽で」

土竜だった――。そう高知さんは自身を揶揄する。だが、穴から出て、日の光を浴びる今の姿は、もう土竜ではないはずだ。

我妻 弘崇 フリーライター

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あづま ひろたか / Hirotaka Aduma

1980年北海道帯広市生まれ。東京都目黒区で育つ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始する。2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターとなる。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開している。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

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