依存症を克服した高知さんは、依存症の啓発や人が再起していく様子を描く「リカバリーカルチャー」を広める活動に加え、俳優活動やメディア出演を再開するようになった。賛否両論はあるだろう。そのことをただすと――。
「自分に対する否定的な意見も受け入れられるようになりました。自分の中で多様性を認めて、いろいろな考えの人がいるよなって。昔のように自分中心の考えじゃなくなりました。昔だったら、『何だと? お前、表出ろ』って思っていたと思う(笑)」
まだ旧い自分が出てくるときも
一方で、「学びの最中です。生き直しをしている途中」と付け加える。
「たまに旧型の自分がパーンと入ってきて、自分の心の中でケンカしています。出てきた、出てきたって。ただ、昔と違うのは心の中で言い合いができること。昔だったら突発的に行動していただろうし、そうした刺激を男らしく対処する……それこそ暴力などで解決することが格好良さだと思っていた。でも、とんでもないですよね。逃げるべきなんです」
弱い自分を受け入れることができたからこそ、逃げることが恥ずかしいことではないとわかった。
「今は楽しくて仕方ないです。新しい自分がいるということは、まだ見ぬ自分がいるわけで成長できるということ。どんな自分が隠れているか楽しみじゃないですか? 小説にしてもそう。編集者から何度も“愛ある赤字”をいただいたけど、まさか自分がこんな小説を書くとは思わなかった。感謝しかない。今は、自分が好きな着たい服を着て、周りから何を言われようと自分らしく生きていける。弱さも、恥も、つらさも、苦しさもすべて自分の一部だとわかりました。だから楽しいんです、今は本当に楽で」
土竜だった――。そう高知さんは自身を揶揄する。だが、穴から出て、日の光を浴びる今の姿は、もう土竜ではないはずだ。
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