埼玉県に潜む「ウイグル料理工場」その意外な全貌 ファストフードのように食べ歩きに合う料理も

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そんな中、2016年に食品輸出の仕事でドバイを訪れた際、日本食を提供するレストランが現地で人気を博していることに気づいたという。

ムスリム(イスラム教徒)でも食べられるハラール日本食のレストランを日本でも作りたいと、翌年日本人の料理人と共同でハラール食材を使ったラーメンやしゃぶしゃぶなどが食べられる「ハラール サクラ」を東京・鶯谷にオープンした。

ハラール サクラ 2021年の時の様子。現在はウズベキスタン人が経営している(写真:筆者撮影)。

東京オリンピックが2020年に開催予定だったこともあり、多くのムスリムが日本に訪れることを見据えた出店だった。中東だけでなく、マレーシアやインドネシアなどムスリムが多い国からの訪日観光客が増えていた当時を思えば、たしかに需要はありそうだった。

ところが一緒に経営していた日本人が工場を去ってしまったこともあり、2018年からは店の経営方針を転換。元々お店で出していたハラール食品や和食のほか、手抓飯やサムサなど、ウイグル料理の提供も開始することにした。

アブレットさんはトルコでウイグル料理のレストランを経営していた友人に、わざわざ日本に来てもらい、ウイグル料理の本格的な調理法を学んだという。

その後、アブレットさんはサプリメントの輸出の仕事など貿易系の仕事が増えてきたことや、新型コロナウイルスの流行もあり、2020年9月に知人のウズベキスタン人にハラール サクラの経営を譲渡することにした。

工場の設備はシンプル

その傍ら、2018年からハラール サクラで提供し始めたウイグル料理の味に自信を持っていたアブレットさんは、故郷の料理を日本で多くの人に食べてもらいたいという思いのもと、ウイグル料理製造工場の開設準備を進め、2022年9月にTandoor Masterを開設した。

工場といっても、その設備はいたってシンプルだ。サムサやナンの生地を捏ねる卓球台ぐらいのテーブルと、それらを焼き上げるタンドール(窯型のオーブン)がこの工場の肝だ。

レンガや粘土を積んで自作したタンドール。総額100万円以上かかったそうだ(写真:筆者撮影)

レンガが積み上げられているタンドールはゼロから自分で作り上げたという。

「サムサは粘土で作られたタンドールの中にペタリと貼り付けて焼き上げます。タンドールのほうが電気オーブンよりも窯の中の温度が高くなるので美味しくできあがるんです。日本では窯のタンドールは買えなかったので3カ月かけて自分で作りました」(アブレットさん)

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