路上でもキャッシュレス「インド猛烈DX」の実態 「途上国モデル」のデジタル革新はまさに爆速

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ミルクチャイ1杯に10セント、野菜1袋に2ドル、といった支払いが、キャッシュレスで行われているということだ。長きにわたって現金で動いてきたインド経済においては、相当な行動変化といえる。

現金からデジタル決済への移行を促した要因の1つに、モディ氏が2016年に高額紙幣を市場から排除する決定を下したことが挙げられる。政治的な闇資金を一掃する取り組みと宣伝された決定だが、高額紙幣の廃止は現金で運営される小規模事業にとてつもないショックをもたらした。

そして新型コロナ禍で、デジタルインフラへの依存度が高まった。世界最大規模のワクチン接種の推進管理と、金銭的支援の提供のために、政府がアーダールのID番号を使用したためだ。

村や小さな街、都市で行った20数人への取材から、インドにおけるデジタル決済の多様な姿が見えてきた。北部に位置するウッタール・プラデーシュ州の村にある店舗では、1日の売上の10%がデジタル決済によるものとなっていた。デリーのもっと賑わいのある市場では、その数字が25%とか50%になることもある。

南部のケララ州における漁業など、まだデジタル決済を採用していない業界ですら、識別番号、銀行口座、携帯電話のアプリという、デジタルインフラの基本的な柱によって、サービスの提供が容易になっていることがわかった。

露店に備え付けられたSiri風デバイス

デジタル決済が定着した市場では、新たな決済手法への純粋な興奮がありありと感じられた。アプリ会社は使い勝手の良さを競い、道端で商売を営む業者たちは互いを助け合い、親がデバイスの使い方に困ると子どもたちが助けに来る。

軽食やチャイの露店にはたいてい、決済アプリが提供する小さな発声装置が備え付けられている。こういった店の売り手はとても忙しいため、少額の決済を行うたびにスマホを確認している余裕はない。

そこでQRコード決済でいくらの金額を受け取ったのかを、Siriのような音声が教えてくれる装置に頼っているわけだ。このやり方は、現金商売に慣れた商人が抱えるキャッシュレス決済に対する不信感を取り除くのにも役立っている。

デリー中央の市場で靴やアイスクリームを売っている業者たちは自前のQRコードを持たず、隣の業者のQRコードを借りていた。

(執筆:Mujib Mashal記者、Hari Kumar記者)
(C)2023 The New York Times

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