路上でもキャッシュレス「インド猛烈DX」の実態 「途上国モデル」のデジタル革新はまさに爆速

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(写真:Atul Loke/The New York Times)

小さなQRコードは、インドの広大な大地のあらゆる場所に行き渡っている。

路上理髪店の横にある木に貼られたQRコード。女性織工が販売する刺しゅうの山や、カートに盛られた炒りたてのピーナツの山にもQRコード。ムンバイの浜辺で活動するパフォーマーは、ロボットのような動きをするパフォーマンスを始める前にQRコードをおひねりの缶に置く。デリーの物乞いには「現金の手持ちがないから」という言い逃れは通用しない。そんなことをしても、QRコードを見せられるだけだ。

モバイル決済で西側諸国をぶっちぎる

QRコードは何億人という人々を、インドのビジネスに革命をもたらした即時決済システムにつないでいる。インドでは国産のデジタルネットワークによって商売の敷居が下がり、多数の国民を公式経済に導いた。こうしたネットワークを通じて月間何十億回という決済がモバイルアプリによって行われている。西側のどの国をも凌駕するスケールだ。

QRコードをカメラで読み取って支払いを行うシステムは、ナレンドラ・モディ首相が推し進める「デジタル公共インフラ」の柱の1つであり、その基盤はインド政府によって築かれた。このシステムによって日々の生活の利便性が増し、銀行サービスを利用できる国民が何百万人と増え、政府のプログラムと徴税が行き届く範囲も広がった。

急速な技術革新が途上国にリープフロッグ効果をもたらし、物理的なインフラの遅れにもかかわらず経済成長が加速する様を、過去に類を見ない規模で示しているのがインドだ。世界の貧困国の地位を押し上げるアイデアのインキュベーターに自らをなぞらえるインドは、この官民モデルを他国に輸出しようとしている。

モディ氏は2月25日、インドが今年の議長国を務めるG20(20カ国・地域)参加国の財務相たちに向けてこう言った。「わが国のデジタル決済エコシステムは、無料の公共財として開発されてきた。これによりインドにおけるガバナンス、金融包摂(誰もが金融サービスを利用できるようにする取り組み)、生活のしやすさは劇的に変化した」。

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