ニューヨークで話題の「古代穀物」って何? 日本で話題のキヌアはもう古い!
「グラマシー・タバーン」の仕入れ責任者であるジェニー・ジョーンズは言う。「できる限り、地元食材100%にしたいと思っていた。果物や野菜、肉、魚ではかなり実現できたが、それ以外の食材は難しかった。たとえば、普通のジャガイモなら調達できたが、在来種のジャガイモは十分な量を確保できなかった」。
シェフたちが数年前に探し始めた頃には、地元産の古代穀物を見つけるのは困難だった。しかしその後は、小規模農家やパン職人、食事からグルテンを減らそうとしている人々など、まったく種類の異なるグループも探し始め、関心が広がっていった。
厳しい環境でも育ち、土も肥沃に
スペルト小麦やエンマー小麦、一粒小麦などの先史時代の穀物は、もう少しで一般的な穀物の仲間入りをしそうだ。また、かつては過小評価されていたソバの実やカムート小麦、ライ麦、ソルガム(イネ科の雑穀)、全粒の大麦、小麦とライ麦の交配種であるライ小麦なども同様だ。(グルテン過敏症の人の中には、スペルト小麦やエンマー小麦、一粒小麦などの古代穀物のほうが現代の穀物より消化しやすいという人もいるが、これらの穀物にもグルテンは含まれているので、グルテンで中毒反応を起こすセリアック病の人は摂取すべきでない)。
全米の小規模農家にとって、古代穀物の栽培は賢明な選択であり、土壌を肥沃にする農法だとエリザベス・ダイクは言う。「有機生産者の調査・情報共有ネットワーク」のコーディネーターであるダイクは、「粒の小さな穀物をほかの作物と交互に育てると、害虫の生育のサイクルが途切れ、また土壌に大量の有機物が含まれるようになる」と話す。
ダイクによると、過酷な環境下でもそうした穀物はよく育つという。
「一般的な小麦とエンマー小麦を並べて育てたら、干ばつにあった時、小麦は枯れてしまってもエンマーは大丈夫だろう」。
こうしたことから、現在では多様な興味深い穀物が、以前とは比べ物にならないくらい手に入るようになっている。さらに、消費者がうれしくなるような話も聞こえてくる。たとえば、古代穀物はとても体によい(現代の穀物よりも、タンパク質やミネラルやほかの栄養素を豊富に含んでいる可能性がある)、あるいは小規模農家が持続的に栽培できるなどだ。
ただし、古代穀物を調理するには、少しばかり訓練がいる。イタリアから輸入されたファッロを20分間だけゆでるのに慣れていると、エンマー小麦や一粒小麦、スペルト小麦、ライ麦などの場合、45分以上かけて調理しなければならないことを苦痛に感じるかもしれない。