日本の洋画離れが加速、23年興収初速に見る深刻 正月興行から長年の課題が浮き彫りになった

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そう考えるとハリウッドスターもその系譜になるのかもしれない。かつてのような時代を超えて出演する作品ごとに大ヒットを生み出すスターはなかなか生まれにくい環境になっている。

外国人俳優でいま世界的に人気のティモシー・シャラメは、『ボーンズ アンド オール』のように日本でも女性映画ファンの足を劇場に向かわせているが、それもコアでありマスではない。

趣味嗜好が多様化し、分散するなか、名前で不特定多数の観客を呼べるハリウッドスターの不在はいまの時代のデフォルトになっている。そんな時代性のなか、洋画はファンの減少に対する有効な打開策を打てていないのが現状ではないだろうか。

洋画人口減少の打開への2つのポイント

この2年間は、コロナ不安と洋画の供給が止まったことにより、年配層が比較的多い洋画ファンの足が劇場から遠のいた。

しかし、昨年は大作を含めて作品が戻り、コロナ不安も和らいだにもかかわらず、思うように観客が戻らなかった。コロナ禍で映像コンテンツのネット配信視聴が一般的になったエンターテインメントを取り巻く環境を鑑みると、「戻りが遅い」のではなく「いなくなった」という仮設も成り立つ。

そんな状況下で日本映画界は何ができるのか。洋画に振り向かなくなった一般層を再び劇場に呼び戻すにはどうするか。洋画ファンの減少に歯止めをかけ、若い世代を含めたファンをどう育てていくか。

大高氏は2つのポイントを挙げる。まず日本の洋画配給会社がすべきこととして「ハリウッドスタジオが世界市場を見据えるなか、本国の言いなりではなく、日本市場を理解している日本支社が率先して、作品ごとに日本人の心に刺さる宣伝をしていかないといけない」。

宣伝手法も大枠では似通っていたり、定番化したフォーマットが踏襲されているケースもある。それもすべてリセットして、これまでやってこなかったことに踏み込む発想も必要だろう。

もう1つは、メディアと洋画配給会社が洋画の面白さを伝えていくことだ。

「洋画の面白さを若い世代に伝え、洋画ファンの裾野を広げていく映画の伝道師が何人も必要。昔は淀川長治さんたちがいた。多岐にわたる作品を横断する専門的な知識があり、広い範囲で娯楽と文化、双方の映画の魅力を語れる人。そのような方々をメディアと洋画配給会社が育てていってほしい」

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