日本の洋画離れが加速、23年興収初速に見る深刻 正月興行から長年の課題が浮き彫りになった
もう1つがストーリー性。日本人の共感や感動を誘うウェルメイドな人間ドラマが減っていることだ。
昨今のハリウッドスタジオ経営者やプロデューサーによるマーケティング主導の製作は、過去の成功を踏襲し、観客のニーズに寄り添い、迎合するものでもある。
大高氏は「ハリウッドスタジオの企画力が脆弱化している。観客をハラハラドキドキさせた、かつての映画製作ノウハウに長けたトップやプロデューサーが減っているのかもしれない」と指摘する。
それにより、大枠で同じような内容の映画ばかりになってしまい、ストーリーの新しさといった新機軸が生まれてこない。アクションやラブストーリーといったジャンルを超えて洋画が定番化しているのだ。
名前で観客を呼べるハリウッドスター不在
それに加えて、大高氏はハリウッドスターの不在も洋画不振の大きな要因として挙げる。
「1990年代は俳優の名前で観客を呼べるスターが何人もいたが、いまやそんなスター主義は滅び、トム・クルーズだけが王道のスター性をつないでいる。彼1人だけでは興行は伸びない。いろいろな外的要因はあるが、スターを生み出せなくなったことが洋画衰退の根本にある」
その外的要因の1つには時代性があるだろう。洋画が強かった1990年代とそれ以降では、観客を取り巻く情報量がまったく変わっている。ネット時代にさまざまなエンターテインメントがあふれるなか、洋画の相対的なステータスが日本人の間で下がっていることが考えられる。かつてはハリウッドスターは憧れの的であり、時代の最先端はハリウッド映画が映していた。しかしいまやそういう時代ではない。
一方、情報過多の時代に一過性のスターやブームは生まれている。たとえば、韓流ブームで四天王が人気になり、スポーツではオリンピックのメダリストのほか、W杯などメジャーな世界大会で日本が勝ったときのサッカー選手やラグビー選手、野球やテニスでも世界的に活躍するプロ選手は時の人になる。しかし、その旬の人気はいつまでも続くわけではない。
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