日本の洋画離れが加速、23年興収初速に見る深刻 正月興行から長年の課題が浮き彫りになった
振り返ると1990年代は洋画が7割で邦画が3割の「ななさん」と言われた洋画全盛の時代だった。トム・クルーズ、ブラッド・ピット、レオナルド・ディカプリオ、キアヌ・リーブスらハリウッドスターが出演する大作の多くが大ヒットし、日本映画市場を牽引。洋画が強い時代が続いていた。
2000年代初頭もその流れが続くが、分岐点になったのが2006年。邦画が大ヒット作を連発し、シェアを53.1%と逆転すると、以降は、大ヒット作のあった年は若干盛り返すものの、「洋画シェア下降傾向」=「洋画の衰退」は長年にわたって続き、2020年のコロナ禍で公開本数もシェアも激減。作品本数は盛り返した2022年もコロナ以前の長年の傾向は変わらず、その流れをコロナ禍がより悪化させる結果になった。
洋画興行を下支えしていた中級ヒットが激減
洋画興行は、2つの層の動員からなる。1つはシリーズ続編など名の知れたハリウッド大作の話題性で動く不特定多数の一般層。もう1つは、中級ヒット(10億円クラスのヒット)を支えるウェルメイド(出来や構成がよい)なアメリカ映画好きの洋画ファン層。
前者は毎年数本はあるハリウッド大作の当たり外れによって動員の上下はあるものの、話題作には動く。一方、後者の洋画ファンは近年じわじわと減少しており、洋画興行を下支えしていた中級クラスのヒット減に歯止めがかからない。それが2006年以降の洋画シェアの縮小傾向に表れている。
この背景を大高氏は「ハリウッド映画が定番化し、日本人の観客に飽きられてきた」とする。
その要因の1つとなるのが、近年のハリウッド映画で多用され、進化を遂げてきたCG映像だ。かつては壮大なスペクタクル映像が観客に驚きや感動を与えたが、いまやそこに以前のような新鮮さはない。
「2000年代頭までは進化していくCG映像に観客は目を見張った。しかし、次第にスペクタクル映像の見せ場ばかりになると、だんだん慣れが染み渡っていく。その後、3Dという新たな革新があったがその命脈は短かった。その先の技術革新はなかなかできていない。行き着くところまで行き着いてしまい、映像にもはや驚きや新鮮さがなく、観客離れが起きてきた」
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