明治「キシリッシュ」撤退の裏にあった戦略の失敗 ガムから事実上撤退、売上高はピークから9割減
差異化戦略というものはリーダー企業がまねしにくい方法をとることが必須だといわれています。ヨード卵・光のマヨネーズは「ヨード卵・光」というブランド卵が存在しているからこそ成立する製品で、卵の世界でブランド商品を持っているわけではないキユーピーには簡単にはまねができません。
フレッシュネスバーガーのように店舗まるごと生野菜の雰囲気をまとった戦い方は、マクドナルドにはまねしにくい戦略です。なにしろ日本だけではなく全世界で同じブランド戦略を展開する大企業ですから、日本ローカルでの敵に対してまったく同じコンセプトの新業態を投入するためには本社を説得する必要が生じます。だからフレッシュネスバーガーはマクドナルドには同質化されにくいわけです。
しかし、キシリッシュの場合はそうではなく、商社を通じてキシリトールを確保して配合すれば、ほかのガムのメーカーでも同じような製品を作ることができます。ここが明治の差異化が不発に終わった戦略的な敗北要因でした。
消費者はメーカーを気にせずに買うようになった
キシリトール自体は、その後のガム業界において大きな支持を得ます。ロッテの主力製品も昭和の時代のスペアミントガムやクールミントガムから、ボトルに入ったミント味のキシリトールガムへと移行して現在に至ります。
そして明治のキシリッシュもロッテのキシリトールガムも同じ商品であり、いつしかわれわれもキシリッシュの指名買いをすることなく、どっちのメーカーだか気にしないまま机の上のボトルガムが切れたら新しいボトルをスーパーで買う日常になっていたのです。
こうしてキシリッシュは市場から消えていくのですが、少しだけ感傷的な気持ちがしたのは私だけではないのではないでしょうか。
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