デフレになると、本当に不況が来るのか

「絶対インフレが良い」というのは間違い

世界経済を歴史的観点から眺めていくと、インフレで不況のときもあれば、デフレで好況のときもあったということがわかります。実際に、ある貴重な研究論文において、デフレ期の9割で経済は成長しており、不況期の7割はデフレではなくインフレであったという、れっきとした事実が証明されているからです。

つまり、経済のデータを恣意的な加工をせずにありのままに概観すると、「デフレと不況の関連性は全くない」「デフレであっても経済が順調なときの方がはるかに多い」ということが判明してしまうのです。アメリカの「主流派経済学」の理論は横に置いておいて、歴史的事実としてそうなっているわけです。

デフレと不況の「意外」な関係

これについては私だけではなく、ミネアポリス連邦準備銀行のアンドリュー・アトキンソン氏とパトリック・J・キホー氏の2人のエコノミストが2004年1月に発表した論文「デフレと不況は実証的に関連するのか?」の中でも明らかにされています。

彼ら2人は過去100年間の世界各国のデータを集め、デフレの時期、インフレの時期、好況の時期、不況の時期の4つの事象に分けてプロットしました。そして「デフレと不況がはっきり関連しているのは、1929年に始まるアメリカの大恐慌の時期だけである」という結論に達しています。

まずは、1929年から1934年までの世界大恐慌時における主要16カ国のインフレ率と実質経済成長率をプロットした図をごらんください。

この図では、世界大恐慌時に16カ国すべてでデフレを経験したものの、そのうち8カ国が「デフレ」と「不況」を同時に経験し、残りの8カ国はデフレだけを経験したことを示しています。そして、16カ国中で成長率がいちばん悪かったのがアメリカでした。

前FRB議長であったベン・バーナンキ氏は、大恐慌の研究で知られています。おそらく彼の脳裏にはこのときのアメリカだけを見て、「デフレ=マイナス成長」という相関関係が刷り込まれてしまったのでしょう。

これに対して、アトキンソン氏とキホー氏は、世界大恐慌時に続いて、1820年〜2000年の非常に長い期間についても、主要17カ国の5年ごとの平均の実質経済成長率とインフレ率を調査し、別図のようにプロットしました。

大恐慌の時期の5年を除くと、合計595例(17カ国×36期間-恐慌時17例)ということになります。

そのうちデフレの事例は73例。しかしそのとき、同時にマイナス成長でもあった「デフレで不況」という事例は8例しかありませんでした。

むしろ、「デフレだが好況」という事例が65例もあり、デフレの事例全体の89%で経済はプラス成長をしていたのです。

このことだけから見ても、「デフレであると、経済が成長できない」などという考え方は、単なる思い込みにすぎないことがわかるでしょう。

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