その一方で、インフレの522例のうち、501例がプラス成長となり、マイナス成長だったのは21例(「デフレでないが不況」の部分)しかありませんでした。こちらも全体の96%はプラス成長となっています。デフレ時よりプラス成長の割合は高いですが、インフレであってもマイナス成長の時期は確実に存在することがわかります。
また、全体で不況の事例は29例ありましたが、そのうちインフレであったのが21例の72%、デフレであったのが8例の28%を占めています。要するに、物価上昇率と不況との間には明確な関連性を云々できるほどのつながりはないのです。
主流派によって、画期的な論文は黙殺された
アトキンソン氏とキホー氏は、この論文を次のように結論付けています。
「われわれの提示したデータをみると、デフレと不況のあいだには強い関連性がないことがわかる。歴史を振り返ってみても、不況があるデフレの期間よりも成長があるデフレの期間のほうが多く、デフレがある不況よりもインフレがある不況のほうが多いことがわかる。総じて、デフレと不況とのあいだに関連がないことをデータは示している。
この研究では、デフレと経済成長の未加工データから読み取れる関係性の特徴を示している。未加工のデータとは、金融制度の様式やデフレ予想の程度など、何も手を加えていない生のデータだ。おそらく、デフレと不況の関連性は過度の動機づけをもとに加工されているデータによって歪曲されているのだろう。
この論文で明らかにしたのは、そのようなデータの加工をなくさなければ、データは明らかな関係を示さないということだ。デフレと不況の関連性が強いと主張する人びとにとって、こうしてハードルは上がっている」
しかし、この歴史的な事実を解き明かした論文はその後、クルーグマン氏やバーナンキ氏をはじめとするアメリカ経済学の主流派によって黙殺されてしまい、表に出ることはほとんどありませんでした。洋の東西を問わず、時代の今昔を問わず、学問で権威ある人々にとって都合の悪いデータは存在しなかったことにされる傾向が強いようです。
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