「奇跡の美声」King Gnu井口理がさらけ出す心の中 歌うこと、演じること、そして自意識の解放

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全てを受け入れると決めた井口は、原作の物語が日記形式であることから、主人公のススメと同様に日記を書くことを決めた。初めての試みだったが、日記の中で自分の心情を整理することで、自身の表現力が変化していく側面を感じていた。

「日記には、本当になんでもないことを書いてました。例えば、部屋の壁にフライパンをかける取っ手があって、それは元カノが残していったものだったんですけど。別れて半年ぐらい気づかなくて、その取っ手について思うことを書いてみたり(笑)。そんな日常で気づいたことに対してどう思っているかをあえて言葉にするっていう。

普段やらないことですけど、それを書き留めていくことで自分の感情が整理されたんです。その影響で、ススメの抑え込んでいる感情や黙っているときの顔の表情に裏付けを持って表現できた部分はありました」

この経験は、歌にも活かされていた。「今まで以上に順序立てて表現できるようになったんです」とアーティスト活動にも影響を与えているようだ。

自意識を解放して、100パーセントの自分で表現しきれた時は特別な力が宿る

井口にとっては、King GnuとしてCDリリースや大型ライブの経験はあるが、俳優として迎える、初の主演映画の公開となる。いったいどんな心境でいるのか。

(C) 2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会

「この映画は、分かりやすい結末があるわけでもなく、観た人の心に問いかける作品だと思うので、色んな反応があって当然というか。 東京国際映画祭で上映された時のお客さんや海外メディアの方の反応を見ていても全然違いました。海外の方はすごく声をあげて笑ってくれた。そこには、生き方の違いもあると思うんですけど。

伊藤監督と話してても、『この映画に共感できない方が幸せだよね』って。でも、一度でも自意識に駆られたことのある人は、共感できる映画だと思います。そういう意味では沢山の人に届いてくれるんじゃないかな。

僕もわかりやすい作品も好きなんですけど、後々の人生や人の気持ちに残っていったりする作品は、わかりやすいものではなくて、作品が提示したものについて考え悩むことで記憶に残るかなと。そういう意味では、この映画は突き抜けた表現があると思うので気に入ってますね」

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